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無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ここから始まる。

サカナクション SAKANAQUARIUM 2015-2016 ”NF Records launch tour”
■2016/03/05@ニトリ文化ホール

 サカナクション、再始動。草刈愛美の出産による1年以上の休止期間を経てのツアーとなる。昨年秋から始まったツアーの終盤ということで乗り遅れた感もあるけど、こうして見ることができて良かった。会場はニトリ文化ホール。旧厚生年金会館。クラシック専門のkitara大ホールを除けば、札幌で最も大きなホール。アリーナクラスを含め、スタンディングでのライヴしか見たことがなかったので全部椅子席のホールでのライヴがどのようになるのか懸念もあったが、それは全くの杞憂だった。音響も映像もレーザー光線もきちんとアジャストし、サカナクションの空間を作り出していた。
 「ナイトフィッシングイズグッド」のリミックスをSEとして5人が登場し、おなじみのクラフトワークフォーメーションでDJ空間が立ち上がる。ホールでこれだけの音響が実現されるというのは驚きというくらいバキバキにカッコいい。序盤はBPM早めの曲で一気に会場を温める。「アルクアラウンド」「セントレイ」をここに持ってくるあたり、後半でそれ以上の盛り上がりを作る自信が見える。ツアーも後半、余裕すら感じる。「新宝島」など、今回初めて演奏される曲もあるが、特にそれをフィーチャーしているツアーではない。こういう、アルバムリリースと関係ない場合のライヴではセットリストに現時点でのバンドのモードやこれからの方向性が示唆されるものだ。それを感じたのは中盤、「壁」から始まったセクション。山口一郎が音楽家としての原点と向かい合うような内省的な曲である「壁」をほぼ照明が全くない暗闇の中で歌った。ここは鳥肌が立った。そこから「years」「ネプトゥーヌス」と、オイルアートの映像をバックに切々と歌い上げる。僕の頭に浮かんだのは原点回帰というか、もう一度自分の中にある音楽の核と向かい合うという意識。そこからまた新しい一歩を踏み出そうという、リスタートの意識があるのでは、と思った。「さよならはエモーション」からは再びレーザー光線が乱れ飛ぶダンスタイムが始まった。「夜の踊り子」では二人の踊り子さんも登場し華を添える。岩寺、草刈が太鼓を叩き、山口一郎がビームサーベルで指揮を振る「SAKANATRIBE」はまるで未来の民族儀式のような不思議な空間だった。そこから本編最後の「新宝島」まで一気に駆け抜ける、緩急も見事な構成だった。
 アンコール、「モノクロトーキョー」まで終わったところで長めのMC。魚釣りをした時にいい当たりがあると「ナイスフィッシュ」と声をかけるのが釣り人の礼儀だそうだ。だから皆もいいライヴを見た時は「ナイスライヴ!」と声をかけよう、と。一気に会場中から湧き出る「ナイスライヴ!」の掛け声。そして前日に行われた日本アカデミー賞で、『バクマン』の音楽を担当したサカナクションが最優秀賞を獲得したというニュースを報告。前日も札幌でライヴだったので、まだトロフィーを見ていないと。そんな話をしているところでトロフィーを持った大根仁監督が登場!アカデミー賞の授賞式を再現するというサプライズがあったのでした。
 そこから、メンバー紹介も交えながらまた一郎君のちょっと長いMC。ざっくり記憶を辿って書くと、オリコン1位になって紅白にも出て、自分たちが想像もしていないところまでサカナクションは一回行ってしまった。こっちの方向はもういいかなという気がしている。クラブイベントやレーベルを立ち上げたり、自分たちがどう音楽と関わるのか、どうリスナーとつながっていくのか、もう一回始めたいと思うからついてきてください、ということを言っていた。つまり、僕がライヴ中に思っていたことを山口一郎自身の口から言ってくれたようなMCだった。やはりこの人は信じられるな、と思った。
 そんな原点回帰の意識からか、メンバー紹介の中ではバンド結成時にそれぞれがどんなバイトをしていたかなど、昔話も。僕は知らなかったのだけど、草刈姉さんだけは当時、大学職員できちんとした職に就いていたのだそうだ。だけど、東京に出ていくことになり、その仕事を辞めて音楽一本にかけることになった。当時山口一郎はそれだけの決断をさせるからには売れなければいけない、音楽で食べていけるようにしないと申し訳ないという責任を背負っていたというのだ。そうして、初のシングル「セントレイ」から『シンシロ』へと続いていく。ライヴのラストはデビューアルバムからの「白波トップウォーター」。スタート地点を再度確かめて、また前に進むのだと言っているのだと思った。
 彼らもすでに10年選手。歴史は積み重なる。バンドには歴史があり、聞いているリスナーにも人生がある。それが絡み合うライヴはまさに一期一会。僕はサカナクションに出会えたことを幸せに思っているし、彼らが札幌のバンドであること(そして山口一郎が奥さんの幼稚園の同級生だったこと)を誇りに思っています。

■SET LIST
1.ナイトフィッシングイズグッド(Remix)
2.アルクアラウンド
3.セントレイ
4.表参道26時
5.AOI
6.スローモーション
7.壁
8.years
9.ネプトゥーヌス
10.さよならはエモーション
11.ネイティブダンサー
12.ホーリーダンス
13.夜の踊り子
14.SAKANATRIBE
15.アイデンティティ
16.ルーキー
17.新宝島
<アンコール>
18.グッドバイ(Remix)
19.ミュージック
20.モノクロトーキョー
21.白波トップウォーター

(写真は終演後の記念撮影時、「みんなも撮って!」という言葉を受けて撮影したものです)
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いい買い物。

 以前から部屋で音楽を聞くとき用にBluetoothスピーカーがほしいと思っていたのですが、今回いろいろと迷った挙句これを購入しました。

 BoseのSoundLink miniというスグレモノもあるのですが価格が2万円台後半とちょっと高いのと、いろいろなレビューを見ると音質的にはむしろFLIP3の方がいいのでは、という意見もあるので、1万円ちょっとで買えるFLIP3にしました。

https://www.instagram.com/p/BDVvB3PrF_e/
Bluetoothスピーカーが欲しくて、買ってしまったJBL FLIP3。

 セットアップは非常に簡単。iPhoneとのペアリングはあっという間に終わり、さっそく音楽を再生するとダイナミックな音が。いろいろなジャンルの音を試してみました。J-POP、ロック、テクノ、R&B、フュージョン、どれも特にクセはなく非常にクリアに聞こえます。低音も十分響きますが、中音域が豊かなのでロック系には特に合う印象です。サイズや重さはほぼ500mlのペットボトルと同じ。このサイズと価格でこの音質ならコスパ的には十分。まれに音がプチプチ途切れることがあるのが玉に傷でしょうか。
 これで家で音楽聞くのが楽しみになりました。Apple Musicのプレイリストをかけっぱなしにしながら読書したりネット見たりしています。

くだらないの中に。

電気グルーヴ ライヴ「お母さん、僕たち映画になったよ。」
■2016/03/04@Zepp Namba

 電気グルーヴのドキュメンタリー映画『DENKI GROOVE THE MOVIE?』は、電気の2人は全く出演せず(過去の映像資料のみ)、過去の当事者や周囲の人々からの意見を集約し客観的に「電気グルーヴとは何なのか?」を検証するものだった。今回のツアーはタイトル通り、25周年を迎え、映画になった彼らがちょっと自分たちへのご褒美と感謝の気持ちとして企画されたようなものだと思う。しかしそれが、思った以上に今の電気グルーヴを見せるものになっていたのはさすがという感じ。
 「コンニチハ、デンキグルーヴデス」という音声からライヴは始まる。サポートDJはagraphこと牛尾憲輔。映画のサントラに近い流れのようでいて、定番やレア曲も周到に織り交ぜていくのがニクイ。「Shameful」から「新幹線」のバキバキな流れは序盤のハイライトだったと思う。『The Last Supper』でのバージョンを基にした「スコーピオン」のカッコよさは異常だった。この曲、ファンの間では賛否の分かれる『ORANGE』に収録されていたからかもしれないけど、過小評価されてる気がする。「あすなろサンシャイン」の神々しさ(いかがわしさ)はまさに瀧の独壇場。久々に聞いた「カメライフ」でも、卓球はステージの端から端まで元気に動く。DJ卓とステージ前方を激しく行き来するので、実は普通にライブするバンドよりも運動量高いのじゃないだろうか。48歳、元気です。卓球のソロからの「Love Domination」もちょっと驚き。サウンドはもちろん、VJでもスクリーンいっぱいに「SEX」の文字が大写しになる羞恥プレイ。カッコいい曲ながら、キチガイおじさんたちの悪趣味さが如実に表れていたと思う。
 いいアーティストというのは、若い時に作った曲をいつまでも歌い続けていられるものだと思う。それはつまり、一貫したものが流れているということに繋がるからだ。おっさんになっても彼らにとっての(というか卓球にとっての)青春の1ページである「N.O.」を歌えるのはカッコいいと思う。彼らのような一見ふざけてばかりいるような人たちはこういう曲を「若気の至り」と否定しがちな気もするが、電気はそうではない。これが、僕が彼らを好きな理由のひとつでもある。本編ラストの「カッコいいジャンパー」まで、実に90分一本勝負。MCなしで一気に走り抜けたのだった。しびれるような、男気を感じるライヴだった。
 アンコールで登場した2人は鬱憤ばらしのようにくだらない喋りを続ける。個人的に一番ツボだったのは卓球が今はなきお笑いコンビ「さくらんぼブービー」のネタ「鍛治君じゃない?」を言い放ったところ。会場のウケはイマイチでしたが僕は爆笑でした。3月末に発売になる映画と、ツアー「塗糞祭」DVD/Blu-rayを一応宣伝し、アンコールは「ポポ」。瀧が全く高音出てなかったのには若干年を感じたけど、こうやってバカなおじさん達が元気に場かやっているのを見られるのはいいものです。彼らに限らず、アラフィフのアーティストが普通にゴロゴロいて、今も元気に現役で音源を出し、ライヴし、フェスにも出ている。そういうのを見ると、歳を取るのも悪いものじゃないなと思うのです。

■SET LIST
・ハローミスターモンキーマジックオーケストラ
・Fallin' Down
・Missing Beatz
・Shameful
・新幹線
・愛のクライネメロディー
・Baby's on Fire
スコーピオン2001
・BARON DANCE
あすなろサンシャイン
・カメライフ
・TKOテクノクイーン
・Love Domination
・Flashback Disco
ジャンボタニシ
・N.O.
・かっこいいジャンパー
<アンコール>
・ポポ

「人間なめんな」の傑作SF。

■オデッセイ
■監督:リドリー・スコット ■出演:マット・デイモンジェシカ・チャスティン、ジェフ・ダニエルズ

ソングス・フロム・オデッセイ

ソングス・フロム・オデッセイ

 アンディ・ウィアーのベストセラーSF小説『火星の人』をリドリー・スコット監督が映画化。探査中の事故で火星に取り残された宇宙飛行士が、孤独なサバイバルを繰り広げる一方で、それに気付いたNASAが決死の救出ミッションに挑む。
 絶望的な状況を頭脳とスキルで乗り越え、火星からの生還を目指すサバイバルものだけど、悲壮感が全くない。常にユーモアを忘れず、パニックにもならず、淡々と目の前の状況に対して対策を考え実行する主人公の姿に引き込まれる。主人公も、地球で対策を考えるNASAの面々も、皆やるべきことをきちんと考え、それぞれの立場で最善を尽くす。主人公が窮地に陥る原因が災害とか不運とかどうしようもないことであって、「誰かバカな奴の自分勝手な行動」じゃないのですよ。だから見ていてとても気持ちがいい。いろんな人がすでに指摘してるけど、本作で中国の技術局が出てくるのはハリウッドの中国進出によるマーケティング戦略ではなくて中国のロケット技術が高いからなんですよね。70年代のディスコミュージックが全編を彩っていて、その曲の内容がその時々のシーンとリンクするようになっている。最近では『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でもあったやり方だけど、こういう手法はまた流行ってきそうですね。本作のラストでオージェイズの「ラブ・トレイン」が流れるのがとてもいい。「世界中の皆、手に手を取ってラブ・トレインを走らせよう」「次の停車駅はもうすぐさ ロシアや中国の人にも伝えよう」「この列車に乗る時が来たんだ この列車をずっと走らせ続けよう」。アメリカと中国が協力し、一人の宇宙飛行士を救出するのを世界中が注目する。そんな映画のラストに流れるのがこの曲ですよ。感動するしかないでしょう。
 「人間なめんな」って思うし、元気もらえる映画でした。『ゼロ・グラビティ』『インターステラー』そしてこの『オデッセイ』と、宇宙のロマンと人間の素晴らしさを描く傑作が最近毎年作られてるのはいいことだと思います。


The O'Jays Love Train

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(下) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(下) (ハヤカワ文庫SF)

生が一番気持ちいい。

 オリジナル・フル・アルバムとしては2010年5月にリリースされた『FANKASTiC』以来となる10作目。この間にスガシカオはそれまで所属していたオフィス・オーガスタから独立し、完全にインディペンデントな自主アーティストとして活動を行っていた。独立しメジャーから離れた理由について彼は「メジャーのパッケージ感がすごく嫌だったんですよ。自分が心血注いで作った曲って、生々しい形で人に伝わってほしいんですけど、(中略)商品になって僕のところに戻ってくる頃には、生々しさがなくなっちゃう感じがしたんですよね。」と語っている。(スガシカオが語る、事務所からの独立とメジャー復帰の真意 - インタビュー : CINRA.NET
 曲を作り、ダイレクトに聞き手に届ける。今の時代にはそれが可能だ。ツイッター上で曲を書いたりレコーディングしていることを発信し、その曲が完成したら1週間もせずにネットで配信される。この数年、インディーになったことでスガシカオの動きがファン以外の人には見えにくくなった面はあったと思うが、彼の楽曲の生々しさと活動におけるフットワークの軽さはその自由を謳歌しているように見えた。本人はもうメジャーに戻るつもりはなかったらしいが、SPEEDSTAR RECORDSの熱意と、今のやり方を踏襲すると言う言葉でメジャー復帰を決めたのだという。
 スガシカオがインディー時代にリリースした音源だけでもかなりの数になる。それらを中心にアルバムにまとめる手もあったと思うが、そうしなかった。アルバムに繋がるのはメジャー復帰後のシングル「アストライド/LIFE」になるだろう。この曲で、本作のトータル・プロデュースを手がける小林武史と初めてタッグを組んでいる。小林の仕事は全体の方向付けで、サウンドプロデュースはスガシカオ自身がほぼ行っている。小林はインディー時代の曲は忘れて、アルバムの曲をイチから作ることを言ったらしい。当初は「アストライド」すらアルバムに収録しないと言われたようだが、スガ本人のどうしてもという意向でこの曲だけ収録されたようだ。インディー時代に手に入れた「生々しさ」をもっと純度高く抽出する。それがこのアルバムのひとつのテーマだったのではないだろうか。そのために、小林武史はソングライティングにおいてスガシカオを徹底的に追い込んだのだろう。手癖や小奇麗なごまかしの表現は必要ない。追い込んで追い込んで、最後に搾り出した言葉と音をパッケージしたかったに違いない。初回限定盤にはインディー時代に配信した楽曲をコンパイルした「THE BEST 2011-2015」がボーナス・ディスクとしてついている。こちらの音源も確かに素晴らしい。しかし、これをそのままアルバムにしても意味がない、と思ったのだろう。
 「いつもふるえていた アル中の父さんの手」という衝撃的なフレーズで始まる冒頭の「ふるえる手」は、最後に収められた「アストライド」と対を成す曲になっている。「何度だってやり直す」という決意と希望をスガシカオは再出発であり集大成とも言えるこのアルバムの最初と最後に配置した。他に収められた曲も、生々しさと直接性を持つ、ザラザラしたものばかりだ。サウンドも非常にエッジが効いたものになっていて、さわやかなBGMになるようなものではない。歌詞も音もどこかいびつで独自性の強いものだと思う。しかしスガシカオの声で歌われるとこれらの曲は不思議とポップな色合いを持つ。彼の声にはそういう力がある。いいにくいことやきわどい表現も、この声で歌われるとすんなり耳に入るというか。僕の好きなスガシカオはそういうアーティストだった。ミもフタもない人間の本質や業のようなものを暴いてみせる、そんな毒を持つ曲が好きだった。このアルバムにはそんなダイレクトな表現が詰まっている。ポップミュージックはポップであるからこそ毒を孕まなくてはいけない。メジャーから独立する際、スガシカオは「50歳までに集大成的なアルバムを作る」とコメントした。まさに、これがそのアルバムである。生々しく、ダイレクトで、毒があり、いびつだけど、ポップ。僕にとってのスガシカオはそういうアーティストだ。


スガ シカオ - 「真夜中の虹」 MUSIC VIDEO