無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

佐野元春 with The Hobo King Band〜20th ANNIVERSARY Tour

■2000/02/18@札幌市民会館
 まず、左のリストを見て欲しい。この日演奏された曲目だ。もう佐野元春のヒット曲満載、まさに彼のデビュー20周年記念ツアーにふさわしい、ファンがやって欲しいと思う曲をほとんど網羅する選曲である。何といっても一発目から「ガラスのジェネレーション」だ。反則だろう、それは。佐野元春という人はあまりにも自分のミュージシャンシップに誠実なために時としてファンが求めるものと少しずれたものを世の中に出してしまう、ということがあるのだけど今日の選曲はもうしびれてしまう。しかし、アレンジを変えていくということでしっかりと期待に応えて(笑)くれていた。
 現在の彼のバックバンドであるThe Hobo King Band、ブラスセクションであるBBBBは少し違うアレンジの中にもかつての彼のバンド、The HEARTLANDの匂いを思い出させる演奏をして、昔からのファンにはまさに涙もの。「ハートビート」でまず最初に泣いた。ライブでこの曲を聞くといつも泣いてしまう。まだ前半戦なのに「悲しきRadio」。盛り上がる盛り上がる。そのまま「彼女はデリケート」に進み、前半終了。10分間の休憩が入る。
 後半は「彼女」からアコースティックでスタート。中盤の「Come Shining」「Complication Shakedown」「GO4」と続く打ち込みのビートに彼のラップが絡むナンバーでは、15年前の彼に今の日本のシーンがようやく追いついた、という感さえあり、改めて彼の先見性に驚くばかりであった。ほぼ昔のアレンジのまま忠実に演奏された「ロックンロール・ナイト」を聞いていると、また涙が出てきた。佐野元春の曲はいつ聞いても僕をその当時の僕に引き戻してしまう力がある。特に初期の曲はそうで「サムデイ」や「ロックンロール〜」の前ではいつも僕は夢でいっぱいのティーンエイジ・キッズなのだ(自分で言うと多少恥ずかしいが)。と、思ってたらアンコールの「アンジェリーナ」の前に元春はこんなことを言っていた。「僕はこの曲でデビューしたんだけど、 20年も経ったなんて思えないんだ。ステージでこの曲を演奏するといつも、僕はまだこの曲を書いた20の頃のままなんじゃないかって思うんだ。変かな?」……変じゃないよ。俺もそうだもんな。この言葉が聞けただけでも佐野元春のファンで良かったと思った。
 2回目のアンコール。演奏されたのは出来すぎのようだが「ぼくは大人になった」。彼は20年経った自分を自覚しているのだろう。しかし彼の中の少年性とミュージシャンとしてのプライドがいまだ新しい音を、進歩を求めて止まないのだ。この日のステージは彼の過去を振り返るというものでは決してなく、それでいてニューモードの元春が突っ走るだけのものでもなかった。バランスをとれる「大人の」佐野元春がいて、ステージの上で暴れまわるやんちゃな彼を温かく見守るファンがいた。本当に心が温まるライブだった。ロックンロールが若さゆえの音楽なのか?何かに反抗するための道具なのか?そんなことはどうでもいい。ただ、これだけは確信できる。少なくとも僕にとって、ロックンロールと佐野元春は同義語である。
 彼の20年が、また始まる。僕はそれを見ることが出来る。幸せだと思う。

■SET LIST
1.ガラスのジェネレーション
2.Happy Man
3.ダウンタウンボーイ
4.冒険者たち
5.Rain Girl
6.ハートビート
7.Bye Bye Handy Love
8.君をさがしている
9.ヤングブラッズ
10.Do What You Like
11.悲しきRadio
12.So Young
13.彼女はデリケート
<休憩>
14.彼女
15.ヤングフォーエバー
16.愛のシステム
17.New Age
18.Come Shining
19.Complication Shakedown
20.GO4
21.インディビジュアリスト
22.約束の橋
23.ロックンロールナイト
24.Someday
25.イノセント
<アンコール1>
26.アンジェリーナ
<アンコール2>
27.ぼくは大人になった
28.Night Life