無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

カサノバ・スネイク

カサノバ・スネイク

 アルバムを出すたびに一体どこまで行ってしまうのかという期待と不安を常に感じさせてくれるバンドだが、またもやとんでもないものを叩きつけてきた。前作『ギヤ・ブルーズ』がどっしりと重いビートで、まるで重油の海をクロールで泳ぎきるようなアルバムだったのに対し、今作はもっと乾いた音で、ビシビシと歯切れのいいロックンロールを聞かせてくれる。などと冷静に書いてるけれども1曲目からほとんどアクセルはベタ踏み状態。9曲目「夜明けのボギー」まで止まる事はなく、その後もまた最後まで止まらない.聞いた後の感触が何かこう爽快で、ついついリピートしてしまう。「リボルバー・ジャンキーズ」なんか聞いてたらたまらない。
 彼らのロックンロールは常にギリギリの所で鳴らされる。これ以上行くともう取り返しがつかなくなる、というところでの綱渡りのようなグルーヴ。チバのシャウトもアベのカッティングも常にギリッギリなのだ。そんな切羽詰った感が今作では閉塞ではなくなぜか開放に向かっている。だだっ広い荒野をバイクに乗って突っ走るような感じ。そりゃまんま「GT400」じゃないか。でもまあ、そういうことだ。去年彼らはアメリカを含むツアーを行ったがそのとき見た風景が音として現れているのかもしれない。高速ロックナンバーだけではない。ラストの「ドロップ」は彼らのキャリアにとっても重要な位置を占める曲になるだろう。
「なめつくした/ドロップの気持ち」
全く湿度を感じさせないからっからのブルーズ。こんな曲世界中探したってこいつらにしか鳴らせない。正直前作でもうマックスだと思ってた。でもあっさりとこんなアルバムを出してきてしまった。もうお手上げ。こんなに乾いてて、それでいてドラマチックで、軽くて重くて広くて。一体ライブがどんなものになるのか、今から楽しみで仕方ない。