無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

THE LIVING DEAD

THE LIVING DEAD

 人が孤独であるということはもはや前提である。自分が孤独であったりクソのような人間であることをことさらに歌ってみたところでそこに希望がなければ誰の心にも響かない、ただの自己満足になるだけである。こういうことを今の若い人たちはきっと既に知っているんだろう。最初から。羨ましい限りだ。
 音楽的にはあまりにもオーソドックスなバンド。ギターが2本、1人がボーカルを兼任、ベース、ドラムの4人編成。なのにこのバンドの音は今まで全く聞いたことのない新しいギターロックである。曲がいい。詞がいい。決して自分の事としてではなく、物語の中で孤独な主人公たちがもがき、明日をつかむ姿を描き出す。ボーカルとバンドのテンションが物語のクライマックスに向けてグングン温度を上げていくさまはそれだけで感動的だ。強引に言葉を乗せるメロディーはその魅力的な声でもってあっという間に閉じた心の鍵を開け放つ。本当にいい声だ。孤独を癒すのではなく前に進む為に扉を開けてやる音楽。進むかどうかは聞き手次第というわけだ。だが。
「大丈夫、大丈夫/僕は君のハートに住む/情熱のランプだよ」
「落としたモノ/失くした類/探す道を歩ける勇気/僕の中の情熱のランプ/今にもマッチは芯に触れる」(LAMP
「船は今/嵐の真ん中で/世界の神ですら/それを救う権利を欲しがるのに」(グングニル
「この手が/ゆっくり/僕の右上で弧を描いた/この眼が/辛うじて/飛んでいく綿毛を見送った」(続・くだらない唄)
 ここにある言葉は驚くほどの即効性で前に進む勇気さえも聞き手の中に産み出していく。ソングライターの藤原が自らを天才と嘯くのはポーズではない。聞けばそれが真実だとわかるはずだ。真に宝石のようなバンド。傑作としかいいようがない。若さと衝動と才能と孤独、絶望と希望、未来。全てが詰まったロックの結晶。素晴らしくて泣けてくる。