無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

Blankey Jet City

■2000/05/21@Zepp Sapporo
 開場前から何か異様なテンションだった。一人一人の気合がもう違うのだ。個人的には変に感傷的になったりしないで普通にライヴを楽しもうと思っていたのだが。だが。それは無理というもんだ。開場にいた人間はみんな分かっているのだ。ブランキーがいなくなることがどんなに大きな損失なのか。少なくともその人にとって。それがあの耳を劈く怒号となって会場を渦巻いていたのだ。
 ブランキーとは、純粋な少年のイノセンスだった。あまりに汚れた世界。あまりに悪いひとたち。その中で薄汚れていく自分。自分も汚れた世界の一部でありながら、それを分かっていながらそれに真っ向から対峙すること。そうしなければいけないのだという事。彼らが僕らに伝えてくれたのはその勇気を持つことではなかったか。
 しかし純粋な物語はいつまでも純粋なままではいられない。少なくとも僕らが生きている限りそれは常に揺れ動き続ける。人間とはそういうものだろう。弱いが故に強さを求める。孤独が故に他人を求める。そうして僕らは汚れていく。
 無垢な心は「都会を流れる濁った水」となった。それが美しいことなのかわからない。けど。「いつかはみんなが好きになる/嬉しさをくれるから」
 出来すぎたエンディング。これでブランキーが綴った命がけの物語は幕を閉じた。けれど僕たちの人生はまだ続く。本当のラストシーンは僕らが自分で描かなくちゃいけないのだ。ブランキージェットシティという名の町の住人として。そして3人はそれぞれの物語をまた描き続けるのだろう。ラストは「DIJのピストル」。日本のロックが生んだ最高のロックアンセムでライブは終わった。会場には泣き崩れる人の姿も多かった。でも立ち上がって歩くんだ。僕らは歩くんだ。それしかないのである。