無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

マニック・マンデー

MONDAY [DVD]

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 酔っ払って記憶をなくすことはよくあることだろう。少なくとも僕にとってはそうだ。で、正気に戻った後、何とも言えぬ不安感に苛まれるのだ。おれはいったい何をしたんだろう。あの後どこに行ったんだっけ。どうやって帰ってきたんだろう。一緒にいた人間に電話かけてなんとなしに聞いてみたりとかして。ああもう最低だ。で、気がついたら自分の部屋、だったらいいが、知らない場所だったら―。もう考えただけでぞっとする。で、そんなぞっとする瞬間から映画は始まる。
 堤真一がいい。他の共演者もつわもの揃いで、豪華キャストという布陣ではあるが、この映画は彼の映画だ。『39』でもそうだったが、情けない正気のときとイッてしまった狂気のときの振れ幅が見事だ。メガネをかけた表情がどうしてもユースケサンタマリアに見えて困った瞬間もあるが、ふとした酔っ払いの顔が柄本明の様にも見えたりするのだ。すごいだろう?見事なエンターテイナーぶりであったと思う。葬式シーンから始まるストーリーはまさにジェットコースターさながらの急展開。天衣無縫支離滅裂。まさに酔っ払いのたわごとのようにあっち行ったりこっち行ったり。それに拍車をかけるキャプテン・ファンクブレイクビーツ!全てが効果的だった。クライマックスも全く説教くさくなく、日本映画にありがちな湿っぽさから完全に飛躍した監督の手腕には脱帽。はっきり言って1時間半、僕はもう笑いっぱなしだった。
 こんな映画ができるんだから、日本もまだ捨てたもんじゃないね。最高!