無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

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刑事コロンボ―レインコートの中のすべて

刑事コロンボ―レインコートの中のすべて

 こんな本があったとは。僕は刑事コロンボのファンなのだけど、ファンなどと言うのもおこがましくなってしまった。実際、旧シリーズのうち僕が見たことがあるのは半分にも満たない。でも、そんな人間でもこの本は充分に面白い。少しでもコロンボを見て面白いと思ったことがある人なら問題なく楽しめると思う。
 原作者であるリチャード・レビンソンとウィリアム・リンク、主演のピーター・フォークから各回のゲスト出演者、その他製作に関わった多くの人々への綿密なインタビューに基づく内容は充実の一言。圧倒されてしまう。『刑事コロンボ』は言うまでもなくアメリカのTVシリーズとして放映されていたものだ。でも日本では金曜ロードショーなんかで放送されるのが主なのでどうも映画館でやっていたのではと錯覚してしまうような気がする(のは僕だけ?)。実際、それだけのクォリティを誇るドラマであったと思う。それも、この本を読めば納得できるというものだ。この本は、製作者がいかに時間と労力を注いでコロンボを作ってきたか、いかに優れた脚本を維持し続けることに神経を使ってきたか、ピーター・フォークがいかなる情熱をもってコロンボを演じ続けてきたかがこれでもかというほどに繰り返される。これを読んでいると、お気楽な日本のドラマなんてやっぱ見れないよという気になってくる(勿論、アメリカにもクズドラマはいくらでもあるのだろうけど)。TV放映以前の話から、時代ごとに順を追って各エピソードごとに解説されているので非常に読みやすいし、シーズンごとの、製作者による作品のカラーの違いなども細かに説明してくれているので、これから改めてコロンボを見る人へのガイドブックとしても最適だし、データベース的意味合いもある。訳注も非常に詳細で、70年代のアメリカのTVドラマ界の解説書としても楽しめる。ちなみに僕が見た中で一番好きだったのはスピルバーグが監督した『構想の死角』なんだけど、やっぱりこれは全作品中でもトップクラスの出来だったらしい。
 本屋でたまたま見かけて手に取った本だったのだけど、思わぬ拾い物だった。僕は単純な人間なので、こういうのを読んでしまうとすぐに見たくなってしまう。