無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

LOVE ALBUM

LOVE ALBUM

LOVE ALBUM

 とてつもなくいいメロディを書くし、声も綺麗。勿論好きなバンドではあったのだけど、今まで僕はサニーデイサービスに特に思い入れがあったわけではなかった。新しい音源はとりあえずチェックするけども、そんなにのめりこむことはなかったのだ。曽我部恵一サニーデイの中で見せていた執拗な音に対するこだわり、完璧主義。それがどことなく息苦しさを感じる原因だったような気がする。恐らくサニーデイの作品の中で最も完璧に美しい前作『MUGEN』も、その完璧さが逆に不自然に感じてしまうこともあった。
 今作は高野勲、杉浦英治をプロデューサーに迎え、曽我部恵一本人はほとんどいちボーカリストとしてレコーディングを楽しんでいるようだ。打ち込みのリズムを基本としたその音は逆に人間くささを感じさせるように温かく、少々ピッチがずれてたりしても気持ち良ければそれでいいという懐の広さというか、余裕を感じることができる。完璧さを求めるあまり、ピリピリした緊張感がそのポップネスを奪いかねなかった今までのサニーデイの危うい部分がこのアルバムには全く感じられない。そして、その結果、このアルバムはもう完璧に美しい。曲による出来不出来がややあるけれども、その人間くささがすごくとっつきやすい。これはこれでいい。そんな人間くさいアルバムを『LOVE ALBUM』と名付けたのが、すごく感動的だと思う。個人的には今までのサニーデイのどのアルバムより聞きこんでいる。