無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

LAST DANCE

LAST DANCE

LAST DANCE

 10年。10年間もこんなバンドと年を重ねられたことを僕はこれからも絶対に忘れることはできない。ありがとうブランキー。さようならブランキー。…ああ、だめだもう。言ってしまえば、いくらでもセンチになれるのである。多くの人にとってもそういう出来事なのはわかるし、そりゃあ僕にとってもそうだった。しかし、この2枚組CD、そしてDVDを前にして思うのは、そういう気持ちは本当に、もうこれで最後にしようと、そういう事だった。
 確かにこの3人が一つのバンドを組んだこと自体が奇跡のようなものだし、それが10年も続いたことも奇跡だったのだろう。ただ僕達は解散という事実を突き付けられるまでそれを忘れてしまっていたのだ。残念なことに。どんなに淡々とロックンロールを演奏していても、3人がステージに居ればそれだけで一つのドラマになってしまうバンドだった。最後の奇跡である、この2000年7月8、9日のドキュメンタリーを僕は自分でも不思議なくらい冷静に見ていた。拳を振り上げ、ジャンプし、歌い、叫び、泣きながら、冷静に見ていた。ブランキーがどんなバンドだったのか、ここに嫌というくらい克明に刻まれている。しかし、ここで演奏している3人は過去のバンドだ。現在進行形ではないのだ。3人はもうここにはいない。前に向かって進み始めているじゃないか。僕らだってここに残っているわけにはいかない。
 最もドラマチックなバンドがその歴史上最もドラマチックだった2日間。そのドラマに埋没しないよう、力ずくでも振り払ってやる。それが、彼らに対する最後の恩返しだ。