無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

SHERBETS

■2000/12/24@札幌ファクトリーホール
 冬休み帰省ついでといってはなんなのだが、ちょうど札幌にシャーベッツが来ていたので見ることができた。幸運といえよう。しかし、前日に簡単にチケットが変えてしまうこの状況って何なのだろう。札幌だから?というか、シャーベッツというバンドの認知度がまだ低いのだろうな。少し残念、ではある。この日は雪。雪降る夜のシャーベッツ。何ともぴったりのシチュエーションではないか。クリスマスイヴなど知ったことではない。
 ライブは最新作『AURORA』を中心にしたセットで、当然、スロー〜ミドル系のナンバーが多い。ガッシャガシャに盛り上がりたそうな連中の意気込みをスカすようにベンジーは淡々とギターを弾き、淡々と歌っている。本当に淡々と、なのだ。感情の起伏とか、ダイナミクスといったものは皆無。全てがベンジーの計算通りと言うか、どこか冷めたトーンのままライブが進行していく。「HIGH SCHOOL」や「ジョーンジェットの犬」ではさすがに盛り上がるものの、そのほかのナンバーでは意気込んだ連中が何とも所在無さげに体を揺らしていた。特に中盤あたりではホールの空気自体がちょっとたるんでいるように思えるほどだった。
 はっきり言って、今のシャーベッツは素材でしかない。1曲1曲を取り出したり、ライブの一瞬一瞬を切り取れば素晴らしいものだが、完成していない。で、ベンジーが完成させていこうとしているのかどうかも実はよく分からない。あまりにも漠然と投げ出されすぎているのだ。少なくとも、今彼らと向き合っているリスナーにはそれを咀嚼する準備ができていない。この日のライブはその事実を浮き彫りにしたものだった。とはいえ、「チャームポイント」などでは、曲が最後になるにつれグングン温度を上げて、突き抜けるようなテンションの高まりを見せる瞬間があったりもした。夏のフェスの時に比べてもバンドがバンドとして機能しているのがよく分かるライブだったことも事実だ。ただ、その行く先がまだ僕には見えていない。