無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

JJ72

JJ72

 繊細なアコースティックギターと美しいメロディーライン。そして一気に静寂を突き破るクライマックス。メロディー主体のドラマチックな曲構成。ああ、昔のレディオヘッドやトラヴィス、そんなこんなと同じありがちなギターバンドね。と思いきや、確かに最近の新人UKギターバンドの中では異彩を放っている。
 とにかくボーカルが素晴らしい。天使の如きボーイソプラノ。だが、全く脆弱ではない。時折ジェフ・バックリィかと思うほどのすさまじさだ。そのボーカルのマークは、子供のころ、ギターを持ったときから作曲を始めていたという。そしてこのアルバムにはその頃の曲も収められているらしい。確かに、技術のない人間が作ったと思われるような、単純なストローク主体の曲もある、が、そんなことは問題じゃない。孤独な部屋でギターを鳴らす一人の少年。その一人ぼっちの部屋で産まれた音楽が世界中に広がっていくというマジック。誰でも機材さえあれば1人で音楽を作れる時代に、いつしか忘れられたロックのダイナミズム。そんなことを思い出させてくれるバンドだ。