無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

何も変わらない。

BROTHER [DVD]

BROTHER [DVD]

 公開前からいろいろな所で話題になってるし、実際、それだけ期待も大きかった映画だろう。公開1週間後に見に行ったけど、かなりの客入りのようだ。監督のこれまでの作品の中でもっとも大きな商業的成功を収めるのは間違いない。
 現地のスタッフを交えてアメリカで撮影されたとはいえ、驚くほど何も変わっていない。カメラワーク、演出、その他もろもろ、今までの北野映画の枠組みから逸脱したものはない。言ってしまえば手癖で撮ったとも言えなくないと思う。ただそれがつまらないとか言うのではなくて彼の個性として確立したものだということ。初の海外撮影ということもあってあえて今回、冒険はしなかったということなのかもしれない。ただ、今まで以上に海外向けを意識せざるを得ない作品の中で、いかにも日本的なヤクザの義理人情の世界をここまでビシッと描ききったことや、日本のヤクザと「兄弟分」となる相手に黒人を選んだことなんかに彼の作家性というか、こだわりを感じる。「HANA-BI」のように、主人公と女性の関係が主となった映画よりもこういう、オットコくさい映画の方がウェットになってしまうというのも、彼の照れというか、そんなものが感じられて可愛い。
 今までやってきたことと何も変わらない、でも客は入る。きっとバカヤローと思ってるんじゃないだろうか。それともザマーミロかな。