無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

安心を買った。旅に出よう。

TEAM ROCK

TEAM ROCK

 このアルバムを聞きながら町を歩く。すると、空はもっと青く、木はもっと緑に、子供はもっと無邪気に、隣にいる女の子はもっとかわいく、見えてくるんじゃないだろうか。そんなアルバムだと思う。
 スリーブの最後にずらずらと書き並べられた日常の些細な感情。このアルバムで鳴っているのは要するにそんな誰もが共有できるシンプルな思いだ。彼らに対してひねくれたとか変態とかそんな言葉はもう出てこない。というか、もとからストレートなバンドだったのだ、彼らは。それを再確認できた。打ち込みのリズム、疾走するギター、ハウス/テクノ、拙いピアノ、その裏に見えるのは全てを引き受けた上で日常の風景を美しく塗り替えてやろうという決意のようなものだ。聞き手、演じ手、全てを巻きこんで「TEAM ROCK」と言い切ってしまうくらい開かれているということを除けば、このアルバムで描かれている風景はスーパーカーの『Futurama』と全く同じだ。この音が鳴っている限り僕らの日常が退屈になることなどあり得ない。
 僕らは安心を買った。さあ、旅に出よう。