無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

生きることを輝かせよう。

宙の淵

宙の淵

 白状します。僕は昨年fra-foaがデビューしたとき、そのバンド名のふわふわした感じと、ボーカル三上ちさ子のルックスから、キュート系のガールポップバンドかと思ってました。とんでもなかったです。すいません。単純に彼女のルックスは好みなんです。それはいいとして。
 聞く度に引き込まれていくアルバム。ぶっきらぼうなノイズギターの中で歌われるパーソナルな死生観、自分の生きる意味、歌う理由。常に何かが足りない、あらかじめ何かが欠けているという感覚。死という消失点に向かって一直線に進んでいく中でその「何か」を取り戻そうとすること。そうした、壮大な生のドキュメントである。このアルバムは。表裏一体の生と死というテーマは、常に鏡写しのようなデザインを使うジャケットワークにも現れていると思う。
 音楽的には少し単調な部分もあるけども、素晴らしい可能性を秘めた表現者が踏み出した第一歩としてはお釣りが来るアルバムだと思う。Cocco系の憑依型ボーカリストとして、これからも要チェック。