無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

百合の花の咲く場所で。

Lily of da valley

Lily of da valley

 前作はヒップホップという下ろしたての武器を手に革命を歌ったわけだが、その肝心の武器がまだ借り物だったと思う。このアルバムを聞いた今となってはそう思わざるを得ない。前作では高速パンクナンバーとヒップホップナンバーが完全に分離していたが、今作では恐ろしい吸収力でもって全てを我が物にしてしまっている。ミクスチャーとか単純な言葉ではくくれない。「自分達はヒップホップバンドではない」と降谷建志は常々言っていたが、すでに彼らはヒップホップからもパンクからもロックからすらもハズレてしまっている。ドラゴンアッシュとしか言いようのない圧倒的な音の塊である。例えるなら、シャキール・オニールレジー・ミラー並みのフリースロー功率を手に入れたようなものだ。死角がない。この期に及んでパクリだ?何を聞いてやがるんだ。
 その磐石の音の上で歌われるのはやはり前向きなメッセージ。一人で突っ走るのではなく、身の回りをきちんと見渡して共闘を呼びかける優しく強い視線。疲れたら休めばいい、とすら言ってくれる。この落ち着きをもってして降谷はまだ22歳。信じられないほどの成長ぶりだ。「目指すマジ高き天井すっ飛ばす俺らが2連勝」勝つのは当然。目指すものはその先にある。自らが手に入れたものに対する圧倒的なこの自信。気持ちいい。完璧に韻を踏むリリック、重く激しいビート。絶妙のタイミングで入るスクラッチ。ゴッシャゴシャにディストーションがかかったギターリフ。その隙間から溢れる美しくメロウな旋律。全てが気持ちいい。くだらないディスなど鼻クソ丸めるようにひねりつぶす完全勝利宣言である。
 日本が誇るグラディエーターバンド、よくぞここまでの最高傑作(現時点での)。