無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

闘え!マニックス

 前作『THIS IS MY TRUTH, TELL ME YOURS』を頂点とするメロディー重視、流麗なストリングスアレンジ志向のマニックスも僕は決して嫌いではなかった。ギラギラした目をして拳を振り上げるしか能がないと思われかねなかった彼らの音楽的才能がようやくイロ眼鏡なしで認められたからだ。ただ、それだけでは物足りないとは思っていた。今のマニックスのいる位置はデビュー当時、自分らが最も忌み嫌ってたところじゃないのかよ、という気も正直してた。しかしその音楽はあまりに美しく、複雑な気分だった。
 そして彼らは戻ってきた。いや、戻ってきた、というより結局戦うことを選んだ、と言った方がいいか。しかも相手はアメリカ、グローバリズムの王国である。あまりに分が悪い。しかし、ここにはロック的な浪漫がある。言うなればキャプテンハーロック的な一匹狼イズム。悲壮感すら漂うそのファイティングポーズは、当たらなければ砕けることすらできない、ということを彼らがデビューの時から知っていたことを思い出させてくれる。どうしても出てくる美しいメロディーと心臓をつかまれるようなジェームズの声と雑食的なアレンジと疾走感。ロックンロール。
 逆に言えば、ひとつくらい、こんな無謀な国民的バンドがいてもいいんじゃないか?と思う。