重厚なドラマに酔う。
- 出版社/メーカー: 東宝ビデオ
- 発売日: 2001/12/21
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登場人物が多く、平行進行するドラマがあるという点でタランティーノの『パルプ・フィクション』やロバート・アルトマンの『ショート・カッツ』、最近見た『スナッチ』みたいな群像ものかと思いきや、3つのドラマ間での登場人物同士の関わりあいがほとんどなく、ラストで一気に複数のドラマが集約するといったカタルシスもない。全く別々の話が淡々と進んでいくのだけど、そのスピード感とキレた演出が心地よかったりする。
そして見た後に残るのは何とも言えぬ無力感だった。この麻薬密売ルートはどうやったって撲滅などできるはずもなく、政府が何をやろうが全て無駄な努力に終わってしまうことが残酷なまでに描かれているからだ。麻薬取締最高責任者役のマイケル・ダグラスが会見でサジを投げてしまうシーンは象徴的だ。この映画には悪を一掃するヒーローなどいない。汚職、賄賂、取引、暗殺…そんな何でもアリの汚れた世界に法で縛られた正義が立ち向かえるわけがない。必要悪として、共存していくしかないのだろうか。そんなことを考えてしまった。ラストシーン、ベニチオ・デル・トロ(アカデミー納得の名演)が子供たちの野球の試合を見るシーンは、唯一の希望として感動的な光を投げている。が、それがいかに些細なものか。全くヘビーな映画だ。
登場人物が多く、エピソードも細かいので予備知識なしに見ると辛いかも。それでも、もう一回見てもいいと思わせる映画。