BECK
- 作者: ハロルド作石
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2000/10/14
- メディア: コミック
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荒木飛呂彦やうすた京介などの例もあるように、最近はその音楽的嗜好をモロに紙面に投影する漫画家も多い。この作者も間違いなくその一人だ。BECKなんつうバンド名もいかにもだし、コユキが後ろに腕を組んでボーカルを取るスタイルはまんまリアム・ギャラガーだし。そして基本的にこのマンガで描かれるロックにはアメリカインディーロックの匂いがする。作中、伝説的と言われているダイイング・ブリードというバンドはなんとなくニルヴァーナっぽくもありパールジャムっぽくもあり。もっと言えばソニックユースの香りも少し。扉絵や、作品中の様々なディテールに至るまでロックファンならニヤリとする仕掛けがぎっしりで、この作者、かなりコアでマニアックなリスナーと見た。で、そういう人が書いているのだからギターで青春イェイ的なものになるはずがない。とりあえずそれなりに順調に活動を続けるバンドと、コユキの成長がベースになるわけだけど、その後ろには微かに暗い影が常についている。描き方としてはギャグマンガのそれなわけだけども、それがまたその影をいっそう際立たせている。それが妙にリアルなのである。青臭さと、ハッピーな青春と、挫折と絶望、死の匂い。そういうものをここまできっちり描いたロックマンガってありそうで実はそうそうないんじゃないのかな。
ロックなんてロクでもないものだという意識を忘れなければこのマンガ、まだまだテンション上げ続けるだろう。すごく楽しみ。