無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

神々しき求道者。

A Rush of Blood to the Head

A Rush of Blood to the Head

 僕はデビュー作の『パラシューツ』をまともに聞いていない。ので、コールドプレイに関してはずぶの素人。イメージ的にトラヴィスに代表されるUK内省ギターロックなんだろうと思っていたのだけど、本作を聞いてその印象は一変してしまった。襟を正してスピーカーに向き直してしまった。ナヨナヨクヨクヨメソメソしたものでは全くなく、もっと強い、骨太でタフな音楽だ。ここにあるのはグッドメロディと重みのある言葉、シンプルなアレンジと鉄壁のバンドアンサンブル、そして音楽に対する真摯な姿勢。それだけ。そしてそれを全て手にしているバンドが世の中に実はあまりいない。このアルバムには何か新しい、革新的な要素があるわけではない。何も特別なことはしていない。だからこそ素晴らしい。このストイックな姿勢は神々しくすらある。"In My Place"もそうだが、"The Scientist"などはゴスペルのように聞える。クリス・マーティンの声はどことなくボノのようだ。
 重厚なアルバムではあるけれども、BGMにしても聞き流せる懐の深さがある。2枚目にしてここまでのアルバムを作れてしまうのはすごいと思う。すでにベテランのような風格がある。1枚目がメガヒットしたことによる様々な逆風を乗り越えたことによる強さなのかもしれない。デビュー作も聞いてみよう。