無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

恐怖は海を渡る。

 なにかと巷で話題の『リング』ハリウッド版。僕は鈴木光司の原作は読んでないし、中田秀夫監督の『リング』もテレビで見ただけだ。でも、日本版の『リング』は役者の演技はともかくそれなりに面白かったように思う。ただ、ラストの方の(有名だから書いちゃうけど)、貞子が出てくるところはどうにも特撮の技術がアレだったのか、それまでのサスペンスがいきなりコントになったようで拍子抜けした記憶がある。とまあ、あまり過剰な期待もせずに見に行ったわけだけど、これはなかなか面白かった。西洋的なホラーと言うより日本の怪談的なおどろおどろしい雰囲気が画面から出ていて、どことなく親近感を感じる。僕は日本版より面白かったと思うけど、ここに関しては多分人によって意見が分かれるんじゃないだろうか。映画の細かいプロットなどはほとんど日本の『リング』そのままだった。原作を知ってる人に言わせると、日本での映画化の時に原作から変わった設定もそのままらしいので、鈴木光司の小説の映画化ではなく、やはり日本の『リング』のリメイクと見るのが正しいのだろう。だからオリジナルの日本の『リング』の方がいい、という人がいてもおかしくはないと思う。ただ、ちょっとアレかなと思ったのは貞子(と言ってもハリウッド版は当然貞子であるわけはなく、それに当たる少女)とその両親の悲劇が非常に近い過去の話だと言うのが気になった。だってオヤジ生きてんだもん。ここはもう、関係者みんな死んでて呪いだけが残ってる、という方が怖いような気がするのだけどな。そこはお国柄の違いでしょうか。
 例の貞子が出てくるシーンは、こちらの圧勝。ILMの技術と、リック・ベイカーによる特殊メイクがとにかく怖い。コントに見えなかったもんね。こういう部分に関しては、さすがにお金をかけた方がいいものが作れるなあ、と思った。その意味で、日本とハリウッドの違い、差、というのが見えるかなという気がする。ただ、アイディアに関しては全くそうではなく、日本発の映画がこうしてハリウッドの技術と結びついて結果を残したということはいいことなのではないかと思います。