無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

入るだけなら入ってみたい。

刑務所の中 特別版 [DVD]

刑務所の中 特別版 [DVD]

 銃砲刀剣類等不法所持、火薬類取締法違反で懲役3年の実刑判決を受けた漫画家、花輪和一氏のベストセラー獄中記を崔洋一が映画化。以前、原作の感想(id:magro:20010704#p1)にも書いたのだけど、この獄中記が異色なのは、とにかく全編好奇心のカタマリと言うくらい、微細に観察され、描き込まれた刑務所内の描写があまりにも新鮮で興味をそそられるものだったことだ。今回の映画化でも、監督はそのトーンを崩さず、あの原作の世界を見事に映像化することに成功している。この映画の成功のもう一つの要因は、山崎努をはじめとするキャストの演技の素晴らしさ。彼らがいなければこの映画は絶対成り立たない、と思えるほど完璧なメンツが揃っている。
 映画は、刑務所の中の何気ない出来事や、くだらない会話、食事や仕事、入浴、そういった毎日の生活、塀の中の日常を主人公である山崎努のモノローグと言う形で進行していく。何と言うことのない日常が、既に非日常である刑務所の中の世界。当然、様々な規制や制約でがんじがらめになっている生活の中で、主人公をはじめとする囚人達はなんと活き活きと毎日を謳歌していることか。不自由なら不自由なりに、人間と言うのはその中で何かしらの楽しみを見つけるものなのだろう。さすがに何年もいるのはイヤだけれども、1週間とか1ヶ月くらいなら入ってみてもいいかな?と思わせる魅力がこの映画にはある。面白い映画でした。