無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ブッチャーズは荒野を行く。

荒野ニオケルbloodthirsty butchers(CCCD)

荒野ニオケルbloodthirsty butchers(CCCD)

 これまでと比べて各段に速くなったビート、分かりやすくなったメロディー、耳に突き刺さってくるコーラス。しかし言葉の鮮度は全く変わっていない。己の存在意義と生きることの意味をディストーションギターに乗せて哲学するブッチャーズの最新進化形と言っていいアルバムだと思う。例えばイースタンユースの『旅路ニ季節ハ燃エ落チル』のように、これを機にバンドを巡る状況は変わってくるのではないだろうか。そんな予感を感じさせる、開かれたアルバムだと思う。
 ブッチャーズというとカルト的な人気を持つ孤高のバンドというイメージが強かった(と、個人的には思っている)。このアルバムが開かれた印象を持つとは言え、そのバンドイメージが大きく変わったとは思わない。タイトルにもあるように、彼らは自分達の立つ場所が荒野であると認識しているし、その中で誰かと徒党を組んだり、目的のために自身の意思を曲げたりなどと言うこともない。やはり孤高のバンドだなと思う。
 ナンバーガールのラストライブでの向井秀徳のMCにおいて数々のバンドの名前が挙がっていた。ブッチャーズもその中に含まれていた。彼らが多くのアーティスト達からリスペクトを受けている理由は、このアルバムを聞いても分かるだろうけど、『kokorono』、『未完成』など、過去の傑作もぜひ聞いてみて欲しい。歪んだギターノイズの重なりがこんなに美しいものだと感じさせてくれるバンドは本当に少ない。