無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

そしてナイフを持って立ってた。

未来は俺等の手の中

未来は俺等の手の中

 THA BLUE HERBのニューシングル。この曲は、ブルーハーツトリビュートアルバムのために製作されたが、「原曲の歌詞、フレーズを用いていない」という理由で収録を見送られたものだそうだ。しかしこれははっきりいってすさまじい出来だと思う。原曲に対する愛と敬意、そして共感をもって、自らの音楽と真剣に対峙したからこそ生まれた珠玉の1曲だ。「未来は僕(俺)等の手の中」という言葉と、自分たちのかつての姿を重ねあわせ、見事に青春のストーリーを紡ぎあげている。
 漠然とした不安とつまらない日常のなか、それでも夢や希望だけは捨てずに持ち続けていた。しかしその夢に向かう道はいまだ自分の前にはなく、どうすればいいのかわからないまま毎日の生活に追われていた。それでも、未来は僕等の手の中という確信だけは揺るぐことはなかった―。
 僕等がブルーハーツの音楽を必要としていたあの頃の空気をビビッドに伝えてくれる素晴らしい楽曲だ。なぜこれがお蔵入りになるのかまったく理由がわからない。そういう判断をしたやつはトリビュートを単なるカバー集だと思っているのだろう。頭が悪過ぎる。音楽の可能性は無限だし、自由な想像力を持ってどこまでも飛んでいける。そんなことも、僕等はブルーハーツから教えてもらったんじゃなかったのか。レコード会社の担当者はこの曲をはじいたことを恥じるべきだ。