無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

マンドゥとディアオ。

Bring Em in

Bring Em in

 スウェーデン出身の新人バンドデビュー作。フロントマン2人が曲を書き、交互にボーカルを取り…というところで、最近のバンドではリバティーンズと似た部分はあるが、彼らのルーツはパンクよりも前、60年代のR&Bを基調としたブリティッシュ・ロック、モッズ・シーンに遡るようだ。ビートルズはもとより、ザ・フーキンクススモール・フェイセズなどの名前が挙がる各種の記事やインタビューなどを見ると「ちょっと誉めすぎじゃないか?」という気もしなくはないが、このデビューアルバムはそんな過去の偉大な先達との比較を持ち出すまでもなく、今現在鳴っているロックンロールとして素晴らしいものになっている。
 懐かしい音色を醸し出すオルガン、そして小憎らしいほどに完成したメロディーと楽曲。そう、とにかく曲がいい。勢い先行でがむしゃらに突っ走るグスタフ・ノリアンと、ソウルフルなボーカルでカチッとした構成の曲を聞かせるビョルン・ディクスクウォット。個性の違う2人のボーカルがバンドの音に奥行きを与え、可能性を感じさせる。不良っぽいたたずまいも、小生意気なビッグ・マウスも、それ全て若さの特権だ。と同時にマンドゥ・ディアオのふてぶてしさには貫禄すら漂っている。ユースカルチャーとしてのロックンロールに何がしかのロマンを感じている人間なら、CDを再生した途端に一瞬で恋に落ちてしまうような、そんなバンドであり、アルバムであると思う。あとはライブがどうなのかだけど、それはサマーソニックで直に確かめるとしよう。