無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

志の高さ。

Loop (CCCD)

Loop (CCCD)

 ロックに限らず、音楽というものは肉体的であると同時に、聞き手の意識の中に何がしかの変化をもたらす、そういうものであると思う。その意味で、 ACIDMANというバンドは現在僕の中で最も高いレベルで知的好奇心に訴えかけてくるバンドだ。観念的な歌詞、サウンドはもちろん、ジャケットのアートワークからPVのビジュアルも含めて、全て自分たちのレールからはずれることなく自分たちの世界を形作る要素としてコントロールする。言ってしまえば当たり前のことではあるけれど、彼らくらい破綻なく「全てがあるべきところにある」バンドも、今の日本を見渡せば他にはいない。それこそ氣志團くらいじゃないか。
 前作よりも核心をつく言葉が目立つ歌詞は、相変わらず今現在のこの世界を憂い、嘆いてはいるが、決してシニシズムには浸らない。聞き手の個としての意識に深く突き刺さり、揺さぶることでその意識を少しでも変えてやること。ACIDMANの音楽がもたらす光とは、その個々の中で生まれる作用に他ならない。3人のバンドアンサンブルも、ものすごい緊張感で美しいトライアングルを描いている。既出のシングル曲が多いので、新鮮さという意味では欠ける部分もあるけど、とてつもなく完成度の高いアルバムだと思う。
 トリオであることや、IQの高そうな所など、僕の中ではポリスと重なる部分が多いのだけど、怒られるかな。個人的にはかなりの誉め言葉のつもりなのだけど。