無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

機能性の勝利。

CiSTm K0nFLiqT (CCCD)

CiSTm K0nFLiqT (CCCD)

 いろんな所でさんざん言われていることではあるけれど、マッドがオズフェストのメインステージに上がり、そのパフォーマンスが絶賛されたということは日本のロックにとって大きな一歩だった。海外に打って出るために音楽性を変えるとか、言葉を変えるとかせずに自分達の道を進んだ結果が今のマッドである、という事実は賞賛に値する。
 マッド3年ぶりの新作は、期待に違わずマッド色全開のハード・デジタル・メロディック・パーティー・チューン目白押しのアルバムになった。前作『010』の時にも書いたのだけど、マッドというバンドはそのサウンドに具体的な感情やメッセージを込めるバンドではない。彼らが表現したいのはそのサウンドが全てであり、「この音が最高に気持ちいい」という簡潔明快な動機に基づくものだ。だからこそ海外でもストレートに受け入れられたのではないかと思う。が、今作では、現在の世界をサヴァイヴするミュージシャンとして避けては通れぬテーマが見え隠れしている。つまりはイラク情勢に代表される不穏なムード。先行シングル「SCARY」はもちろんのこと、「Bomb Idea」「W・O・R・L・D」など、歌詞に明確な社会性を伴うものが実際本作には少なくない。しかし、音楽にそうしたメッセージ性を投影することが目的なのではなく、単純に今の地球に生きてる人間としての普通の感覚で書くとそうなるというレベルのものだと思う。あくまでも自分達の感性に直結した機能性の高さがマッドの真骨頂だと思うし、それは決して揺らいではいない。相変わらず「Sunny Beach Rd.」「She loves it」のようにお気楽で享楽的な曲もあるし、ストリート・スポーツのBGMにばっちりハマるのはこのへんがキモ。プラス、今作はハードなサウンドとメロウなサウンド(音の一要素として)が渾然一体となり、さらに唯一無二の高みに到達している。
 フェスで大合唱できそうな即効性の高いメロディーラインも健在だし、国内国外問わずまたマッドのライヴがシーンを熱くさせてくれそうだ。Tシャツ短パンで思い切りジャンプしたい。