無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

漂う80sの空気感。

 正直言ってここ1,2年、彼女達のシングルはきちんと購入して聞いていなかった。まず単純に楽曲として面白味がなかったというのが理由だ。詞、曲、アレンジ、曲の内包するメッセージとその発露たる彼女達の歌唱、表現力、そして映像として見た時の面白さ、ワクワク感。どれもが凡庸だった。「ザ☆ピ〜ス!」、「Mr.Moonlight〜愛のビッグバンド〜」という名曲を超えることは難しいにしても、「ここにいるぜぇ!」以降全ての面においてレベルの低いリリースが続いていた感は否めない。(それに対して松浦亜弥の曲は結構いいものがあったのだよな。つんく♂の力の入れ加減の違いなのだろうか。)個人的に興味が薄れる理由としては安倍なつみが卒業してしまったことも大きかった。ミニモニも終わってしまったし、ここで加護辻が抜けてしまってはどうなるのだろう、という所に出たこの最新シングルは意外にと言ってはなんだがいい出来だった。
 まずイントロのギターで反応する人は反応すると思うが、明らかに80年代のJ-POP(まあ、80年代にはこんな言葉なかったけど)を意識したアレンジが施されている。事実、参加したミュージシャンのクレジットを見ると、ベース川添智久リンドバーグ)、キーボード土橋安騎夫レベッカ)、ソプラノサックスKONTA(バービーボーイズ)である。もう、そういう音にしたいんだ!という魂胆が見え見えのセレクション。前述のイントロはソプラノサックスの音色も手伝ってまさにバービーそのもの。好きだった人にはたまらないノスタルジックな気分を喚起させる。別に歌詞的には目新しさはないが、楽曲としての個性がここ最近のシングルの中でも際立っていて、意外と飽きない。ただ、こういうアプローチは一発芸的なものなので次回に生かされるわけではないだろう。いずれにせよ難しい場面に来ていることには変わりはないと思うが…。