無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ゾンビ・オン・ザ・ラン。

 かのジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』のリメイク。でも劇場で予告編を見たときは何も言ってなかったのでてっきり僕は『アウトブレイク』のような疫病ものだと思っていた。よく言われているように、オリジナルゾンビと違うのは今回のゾンビが走って追いかけてくること。ホラーファンの間では賛否両論らしいけど、僕はこれは非常に恐いので良かったと思う。冒頭、主人公がゾンビになった夫から車で逃げるシーンで、この走るゾンビの恐さがあますところなく描かれているので、このあとゾンビが出てくる際にはすべからくこの「追いかけられる恐怖」がつきまとうことになる。なかなか上手い演出。
 ショッピングモールでの群像劇はつまるところ「誰が生き残るのか」というサバイバルゲームを思わせるもので、選択肢の無いゲームをプレイしているような感覚で映画が進行する。銃砲店を営むアンディが街に群がるゾンビを撃ち殺していくシーンがあるが、これも言ってしまえばシューティングゲームの感覚。冒頭から何の説明もなくいきなりゾンビが現れるし、考える間もなく映画の世界に引き込まれてしまう。最初の数分の恐さがこの映画の決め手と言ってもいいくらいのスピード感。監督はCMやミュージックビデオ出身の人でこれが長編劇場映画デビューとなる。オリジナルに対するリスペクトはもちろんあるが、これは『バイオハザード』とかのゲームをプレイしてきた世代が作った映画なのかな、という気がする。
 ラストの救いのなさも含めて、ストーリー的にはあまり驚く展開はないので、純粋にゾンビの恐さとスリルを味わえると思う。オリジナルを知っている人はいろいろ気になるのかもしれないけど、そうでなければシンプルに恐い映画を楽しめるのでは。