無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

繰り返される諸行無常。

ZAZEN BOYS "TOUR MATSURI SESSION"
■2004/09/05@札幌ペニーレーン24
 ファーストアルバム後のツアーは見ることができなかったのでライヴを見るのは昨年のライジングサン以来となる。あの時は初ステージということもあり、不安で手探りな部分が多々あったものだが、今は2枚のアルバムとライヴを積み重ねてきたことで向井のみならずバンド全体が何の迷いもなく堂々とした佇まいを見せるようになっている。特にその変化が見えるのはベースの日向とギターの吉兼の二人、つまりは向井とアヒトじゃない人たちからだ。ZAZEN BOYSのジ・アザー・トゥー。彼らがバンドの中で自分を表現できるようになり、4つの個性がぶつかり合う「バンド」という形態になってくることで一歩突き抜けたような部分はあったのだと思う。ZAZEN BOYSの曲はセッションの中で作られる。それを飽くなき反復練習によって徹底的に体に染み込ませ、更にそこから生じる化学反応をも手に入れようとしている(のだと思う)。「YURETA〜」や、新作からの「COLD BEAT」なんかを聞くと単純に感心してしまう。人力でこういう演奏をする凄さと、その結果として出てくる音の凄まじさ。それはもちろん向井のボーカルに対してもである。よく舌かまないなというか、つっかからないで歌えるよなと思う。
 新作でより顕著になったヒップホップ感覚やニューウェイブ趣味は、ライヴにおいてはあまり強調されない。「○○的」という形容詞を一旦チャラにして全てがまずはロック!というところから鳴らされるような気がする。それでいて「CRAZY DAYS〜」や「安眠棒」だとクラブで踊っているような感覚で、ロックのライヴであることを忘れてしまうような不思議な感覚にとらわれるのだ。かと思えば「DAIGAKUSEI」や「黒い下着」では(あえて言えば)ナンバーガール的な盛り上がりを見せる。あの世界も含めて、今の向井は自分の持っているものを隠すことなく全て見せるつもりなのだろう。そこに迷いはない。ステージ上の向井の顔からもそれがわかる。今の自分の頭の中にある音、言葉、バンドのメンバー、そして自分の音楽が伝わっている状況全てに自信が漲っている感じがする。
 この日集まった客の喜びと満足感に溢れた顔を見ていると、僕も含めてロックファンが向井秀徳という男に向ける信頼感はかなり大きなものになっていると実感する。ナンバーガールがその歴史を終えたこのペニーレーン。そしてまた、新たな歴史が今まさに作られている途上なのだ。

■SET LIST
1.FENDER TELECASTER
2.WHISKY & UNUBORE
3.CRAZY DAYS CRAZY FEELING
4.USODARAKE
5.YURETA YURETA YURETA
6.安眠棒
7.COLD BEAT
8.You make me feel so bad
9.(宮藤官九郎監督映画より)
10.MABOROSHI IN MY BLOOD
11.IKASAMA LOVE
12.DAIGAKUSEI
13.SASU-YOU
14.黒い下着
15.SEKARASIKA
16.最前線
17.KIMOCHI
18.自問自答

19.6本の狂ったハガネの振動
20.半透明少女関係