無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

70年代アメリカ西海岸の味わい。

■EAGLES FAREWELL I TOUR
■2004/10/24@札幌ドーム
 札幌ドームに向かう人の列。昨年末にエリック・クラプトンを見に行った時もそうだったのだけど、普段僕の行くライヴとは年齢層がおおよそ倍違う。自分が若年層だと自覚できるコンサートは少ないので(少ないんだよ、最近は本当に)こういうときに目一杯はしゃいでやろうと思った。Webの先行予約で取ったチケットだったのだけど、アリーナのBブロック、ステージ向かってやや左寄りというかなりいい席だった。肉眼でステージ上のメンバーの表情が見えるくらい。アリーナクラスの会場でここまでいい席取れたのは昨年のストーンズ@東京ドーム以来だ。
 客電が落ち、場内に歓声が響き渡る。大盛り上がりなのにアリーナでも立ち上がったのは半数程度。あとはゆったりと座ったまま鑑賞。うーん、こういう雰囲気もなかなか普段では味わえない。僕も状況を見つつ座るときはゆったりと椅子に腰掛けて見ていた。今回の来日メンバーはドン・ヘンリー、グレン・フライ、ジョー・ウォルシュ、ティモシー・B・シュミットの4人。ドン・フェルダーは来てないのね。ドン・ヘンリーがかなり恰幅よくなってた。4人とも非常にラフな服装。1曲目はホーンセクションも高らかに「ザ・ロング・ラン」そして「ニュー・キッド・イン・タウン」へ。見た目は老けても4人ともその声のツヤは往年のまま、というか、むしろ年を経て渋さと深みが増している感すらある。ハイトーンでもかすれたり苦しそうなところはほとんどなく、余裕すら感じさせるいぶし銀の演奏。「時は流れて」とか「ピースフル・イージー・フィーリング」とか聞いているとなんだかほんわりといい気分になってくる。時代を感じるというか、基本的にAORというか、全然ギスギスした音楽ではない。しかし「呪われた夜」ではやっぱり盛り上がる。「フェアウェルツアー」などと銘打っているし、最後の来日とも噂されているのでいわゆるベストヒット的なコンサートなのかと思いきや(まあ、半分はそうだけど)それだけというわけでもなく、4人で世界をツアーして回るのを本人達が非常にリラックスして楽しんでいるようだ。本人達がやりたい曲をやっているという感じが強い気がする。それでも嬉しかったのはメンバーのソロ曲もいくつかやっていて、ドン・ヘンリーの「ボーイズ・オブ・サマー」をやってくれたこと。この曲は1985年の彼のソロヒット作『ビルディング・ザ・パーフェクト・ビースト』に収録されていた曲で、僕が洋楽など聞き始めた当時の現風景として記憶に残っている曲だ。「過ぎた事」が終わったところで一度メンバーが引っ込む。あれ、と思っていたら「ここで15分間の休憩です」というアナウンス。ここまではっきりと「休憩」を打ち出したコンサートも初めて。微妙なざわめきと失笑を残しつつ15分間は過ぎていく。
 休憩後は4人がステージ前方に並んで椅子に座り、アコースティックな雰囲気でスタート。「テキーラ・サンライズ」、「ラヴ・ウィル・キープ・アス・アライヴ」と、安定したハーモニーで聞かせる。続いては新曲(だと思います。最近出たベストにも入ってるし。)「ホール・イン・ザ・ワールド」。ドン・ヘンリー曰く「9.11をきっかけに作った」そう。ジョー・ウォルシュのソロ「ウォーク・アウェイ」は盛り上がった。ジョーがカメラつきのヘルメットを被り、その映像がスクリーンに映し出されるという演出。ドームクラスの会場をステージから見た風景などなかなか見れる機会は無いので面白かった(映像は悪かったけど)。「駆け足の人生」で本編は終わり。
 そしてアンコール、ようやくという感じで哀愁のトランペットソロから「ホテル・カリフォルニア」へ。やっぱりこれを聞かなければ帰れない。さすがに僕はリアルタイムでは記憶はないが、小学生の頃に(既にナツメロとして)ラジオでかかっていたのを憶えている。ドン・ヘンリーの憂いのあるボーカルがやはり曲の雰囲気に異常にマッチしていて、生で聞くとまた感動。これ1曲だけでまた引っ込み、すぐに2度目のアンコール。ジョー・ウォルシュのソロから「ロッキー・マウンテン・ウェイ」、そしてドン・ヘンリーのソロ「オール・シー・ウォント・トゥ・イズ・ダンス」。これも前述の『ビルディング〜』に入ってた曲だと思うんだけど、あんまりヒットしてなかったのでいまいち憶えていない。最後はほんとにサービスというか、来てくれてありがとう的な感じで「テイク・イット・イージー」、そして「ならず者」をしんみりと歌い上げ、終演。正直僕はそんなにイーグルスに入れ込んだ時期があるわけではない。この日のコンサートで聞いても彼らの曲はややリラックスしすぎというか、するっと流れていってしまうものも多い。ステージから見えてくる「現役感」のようなものも数ヶ月前に見たエアロスミスには全く及ばない。けれども、こういうのもたまには良いなあ、と思ったりもするわけで、人生には緩急が必要なのだなあと。ベテランによる大人の熟練の技を堪能したステージと言いましょうか。なんだかんだ言ってもこのクラスの会場を埋めるってのはたいしたものだと思う。個人的にはグレン・フライのソロも聞きたかった。「ヒート・イズ・オン」とか「ユー・ビロング・トゥ・ザ・シティ」とか。懐かしいよね。

■SET LIST
1.The Long Run
2.New Kid In Town
3.Wasted Time
4.Peaceful Easy Feeling
5.I Can't Tell You Why
6.One Of These Nights
7.Lyin' Eyes
8.The Boys Of Summer
9.In The City
10.Already Gone
11.Tequila Sunrise
12.Love Will Keep Us Alive
13.Hole In The World
14.Take It To The Limit
15.Dirty Laundry
16.Walk Away
17.Life's Been Good
18.Heartache Tonight
19.Life In The Fast Lane

20.Hotel Calfornia

21.Rocky Mountain Way
22.All She Wants To Do Is Dance
23.Take It Easy
24.Desperado