無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

氣志團現象最終章(1)

氣志團現象最終章−THE LAST SONG−
■2004/10/23@真駒内アイスアリーナ
 回を追うごとにその規模を増し、もっと!もっと!!と日本全土を巻き込んで拡大していった氣志團現象。その最終章がついに、やってきた。と言っても、このツアーの後氣志團がどうなるのかは綾小路翔の口からは何も詳しいことは語られていない。とにかく今は、いつものように体全体で彼らのGIGを受け止め、彼らと一体になって盛り上がるだけだ。
 会場は地下鉄南北線からバスで約5分。真駒内アイスアリーナ。ここにライヴを見に行った記憶はほとんどない。焼きそばやホットドッグなど、簡単な屋台がいくつか並んでいる。グッズ関係は会場の外で販売されていたのでパンフとタオルをゲット。グッズ売り場の横に長蛇の列があって、何かと思ったら氣志團プリクラだった。会場の中に入る。この日は実はトミーの誕生日で、彼に内緒でサプライズプレゼントをしよう!という趣旨で入場の際にサイリウム(あの、パキっと折ると蛍光塗料が光るやつ)が配布された。会場の中にはゴルゴ13の顔をしたガチャピンのようなわけのわからない着ぐるみが徘徊しており、いやがうえにも気分は盛り上がる。これでもかこれでもかという闇雲なパワーが場内に溢れているのだ。それはこのツアーにかける氣志團の意気込みが生み出したものであることに間違いない。
 客電が落ち、スクリーンに映像が映し出される。結成から現在までの氣志團の歩み。そして、今回のツアーのテーマである「KISHIDAN for WHAT?…」に対するメンバーそれぞれの思い。「氣志團とは何か?」「俺達はなぜ生まれてきたのか?」…その意味を知りたかっただけさ。そう、全てはその答えを見つけるために。ステージ上の櫓に和太鼓隊が出現。「BE MY BABY」のイントロに合わせ演舞する。その音もかき消されるような大歓声のなかステージ奥の扉が開き6人が登場。スモークの中、逆光に浮かび上がるそのシルエットに体中がしびれる。か、カッコいい!1曲目。トミーのギターが空気を切り裂くようにあのフレーズを鳴らす。「房総スカイライン・ファントム」。この曲からGIGがスタートするのは久しぶりのことだ。そして、翔ヤンと光の振りも異常なくらいに気合が入っている。指先まで神経が張り詰めているかのような動き。これだけで、彼らのこのステージに、このツアーに架ける思いがビンビンに伝わってきた。2曲目「黒い太陽」。「俺達はなぜ生まれてきたか」このテーマがいきなり登場する。息もつかせず「雷電」そして「ゴッド・スピード・ユー」。…ヤバイ。ヤバイくらいに本気だ。冗談も誤魔化しも一切ない。もちろん氣志團が自らの表現から逃げたことなど一度としてないのだが、このオープニングからの流れは過去最高に彼らの本気のテンションを感じさせた。アドレナリンが出まくった。
 こういう言い方は彼らに失礼かもしれないが、そのコンセプトにしろ、音楽にしろ、氣志團はデビューの時点で完成されていたバンドだ。デビュー作『1/6 LONELY NIGHT』の中に彼らの活動する理由、テーマ、全てが既に詰まっていたのだ。語弊を恐れずに言えば、だからこそ彼らは今に至るまであのアルバムを越えることができていないのである。この、初期楽曲の連発を見ると、「これこそが氣志團である!」と断言したくなる。僕が彼らに惹きつけられた理由が一瞬で理解できるものだったのだ。ステージは左右、そして正面に巨大なスクリーンがあり、同じく正面と左右に細いステージが客席の中に伸びている。中央の通路の先はせり上がりの円形ステージになっており、仕掛けも過去最大級のものだ。「今日はCまで行くぜ!」という翔ヤンのMCから「スウィンギン・ニッポン」、そして「恋人」と続き、再び落ち着いてのMCタイム。前日に函館に行った話などから何気にトミーの誕生日の話になる。翔ヤンの合図で会場の電気が落ち、一斉に皆がサイリウムを光らせる。紫色の光が会場中を照らす中、全員でハッピーバースデーを歌う。トミーには何も知らされていなかったらしく、かなり感極まっていた。「この年になってこうやって祝ってもらえるとは…」とつい本音も出ていた(すぐに「や、18才なんですけど…」と言い直していたが笑)。
 「D×D×D」ではステージで何本もの火柱が上がる演出。「潮騒の子守唄」の後半、松のベースソロから始まるインストパートでフロントの二人は引っ込み、衣替え。続いての「デリキス」イントロでステージ下から飛び出し。「PETERPAN〜」では、翔ヤンが宙吊りになり、まさにミュージカル「ピーターパン(by榊原郁恵)」である。これでもかと言うアクロバティックな演出と、それを真っ向勝負で受け止め、届けるバンド。完璧なショウ。しかし驚くべきことにこれはまだ序盤。ここから本ツアーの肝と言うべき怒涛の展開が待っているのだった。