無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

アジカン・ビー・アンビシャス。

ソルファ

ソルファ

 いい曲を書くとは思っていたけれど、正直前作『君繋ファイブエム』までは海のものとも山のものとも僕の中では判断しかねていたアジカンがまぎれもなく日本のロックの未来を担うバンドのひとつであることを証明したセカンドアルバム。
 前作は「繋ぐ」という言葉がキーワードになっていた。本作ではその直接的なコミュニケーションという軸はそのままに、さらに深く、もっと広い視野で大きく包み込むような包容力を感じさせる歌詞が印象的だ。その代表ともいえる重要な曲「サイレン」をアルバムの中心に配置し、ごく自然な流れでトータルに聞き通すことができる。その点でも前作からの成長を感じる。サウンド面においては、リズム隊に比べ充実度がいまいちだったギターの音に進歩が見える。フレージングやアレンジでさまざまなアイディアを試していて、「ラストシーン」のようにいい形でそれが前面に出た曲もある。少なくとも音源の中ではギターロックとしていいバランスになったと言えると思う。
 もともと曲はポップだし、それに加え歌詞も難解で言葉遊び的な言い回しが少なくなったことで非常に素直に耳に入ってくる。これは意図的なことだと思うのだけど、その裏にあるのは自分たちの位置を理解した上で真っ向からごまかさずにシーンの中心に乗り込んでやろう、という意思じゃないかと思う。もちろん前作でも十分な成功を収めてはいるのだけど、もっと自覚的に自分たちがやってやるんだという強く熱いものを感じる。クールなようでいてかなり野心的なアジカンの本性が露になったアルバムと言えるのではないだろうか。
 「24時」「海岸通り」など、曲の舞台となっている時間や風景が全体から匂いたつような曲が個人的には好き。ラストが「ループ&ループ」なのもいいと思う。次に「繋がって」いくのだ。