無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ACIDMAN、その核へ。

ACIDMAN LIVE TOUR "equal"
■2004/12/04@渋谷AX
 札幌公演がちょうど奥田民生の「ひとり股旅スペシャル」に重なってしまったので奮発して東京までに見に行くことにしたACIDMAN。夕方から雨が降り始め、渋谷AXというところは外にしかロッカーがないのでかなり寒い思いをしてTシャツ姿で開場を待つ人が多数いた。というか僕もそのひとり。
 ほぼ3年ぶりの渋谷AXは、心なしか狭く見えた。普段Zepp Sapporoでライブを見ることが多いので、どうしても重ねてしまうのだけど、ステージに向っての縦方向の奥行きが1段階小さい。まあ、その分最後列でもそれほどステージとの距離を感じないということではあるのだけど。
 「0=ALL」のSEをバックに3人が登場。ものすごい歓声の中、ゆっくりと楽器を手にし、位置につく。SEが終わった途端に『equal』アルバムと同じくそのまま「FREAK OUT」に。初っ端から興奮の坩堝。ツアーのラスト2デイズということもあり、3人ともかなり気合が入っているようだ。これまで見たときにはかなり頼りなげで脱力だったイチゴ氏のMCもそれなりに決まっていた。前半、惜しげもなくシングルや代表曲で畳み掛ける怒涛の展開もすごいのだが、やはり彼らのライブの緊張感を最も端的に集約させるのは中間部のスローパート。「水写」から「彩」までの時間は、大きなビートとたゆたうようなメロディー、そしてステージのバックに映し出される様々なモチーフの映像が渾然一体となって聞き手を「ここではないどこか」へと連れて行く。その「どこか」というのはもちろんどこかの楽園などではなく、自分自身の内的世界に他ならない。30分近くにわたるそのサイケデリックな体験は、通常のギターロックでは絶対に味わえない類の快感だ。彼らは音源とともに必ず映像作品も対としてリリースしているけれども、ライブにおいて映像を用いるロックバンドとしてはこれはもう完成の域に達しているんじゃないかと思う。
 後半は『equal』からの曲を中心に、アゲアゲモードで突っ走る。ひとしきり汗をかいたところでラストに持ってくるのは壮大な輪廻転生の物語だ。このときの映像は抽象的なモチーフの重なり合いというものではなく、宇宙、星、生命の誕生、文明の栄枯盛衰、そして全てが無に帰す―というスケールの大きな叙事詩を非常に具体的なイメージで描いたものだった。この「廻る、巡る、その核へ」という曲のテーマは前作『Loop』の「Turn Around」などと同じものであるが、ここに至ってその表現としてはかなり「やり尽くした」感があるのではないだろうか。単純にCDを聞いただけではあまり気づかないが、『創』から『equal』までが3部作として通用してしまうような一つの円環の完成を見た気がした。彼らの表現は音源・映像・ライブ全てをもってしてその全貌が見えてくるものなのだ。

■SET LIST
1.0=ALL(SE)
2.FREAK OUT
3.swayed
4.波、白く
5.アイソトープ
6.アレグロ
7.equal
8.赤橙
9.水写
10.リピート
11.彩−SAI−(前編)
12.彩−SAI−(後編)
13.暁を残して
14.migration 10^64
15.colors of the wind
16.風、冴ゆる
17.飛光
18.廻る、巡る、その核へ
<アンコール>
19.SILENCE
20.造花が笑う