無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

魂の叫び×2が交錯した夜。

BRAHMAN "TOUR THE MIDDLE THOUGHT"
■2004/12/03@Zepp Sapporo
 この日のライブはオープニングにTHA BLUE HERB(以下ブルーハーブ)が出演していた。ライジングサンでシロップとかぶっていたために見逃した僕には非常に嬉しい。実に1時間ほどやっていたのでダブルヘッドライナーと言ってもいいほどのものだった。実際、進行中のブルーハーブのツアーでもこの日のステージはカウントされているし。と言うわけで久々に見たブルーハーブ。ステージにはライブDJであるDJ.DYEとBOSS-MCの二人だけ。途切れることのない言葉の端々にあるのは厳しい向かい風に晒されながらも目の光を失わずゆっくりと確実に歩を進める男の姿。まさに「ON THA ROAD」の世界。日本語 カタカナ 英語選りすぐったビート必殺の抜きと刺しを楔の様に打ち込む彼らの音楽は、そのストイックで求道的な佇まいとは裏腹にいつでも両手をこちらの方に差し出してきている。言葉が攻撃的であったとしても僕は傷つけられたとは思わない。それ以上に彼ら自身が傷ついているし、その裏にある温かい視点を見逃すことができないからだ。ブルーハーブは無条件に何かを攻撃したり擁護したり突き放したりすることはない。しっかりと足を地に付けた対等な個としてステージとフロアがそこにあるべきだと思っている。説教をするのではない。何かを諭すのでもない。俺はこうだ、こう思う。お前はどうなんだ?魂の会話が、そこで行われる。静かだけど、とても熱い夜だった。久しぶりに聞いた生のBOSSの声はとても澄んでいた(いつもだけど)。彼らは来るべき3枚目のアルバム制作のため、2004年末で一切のライブ活動を休止するという。今のうちに見ておけてよかった。

 3年ぶりのアルバム『THE MIDDLE WAY』を発表したBRAHMAN。彼らのライブも、個人的には3年ぶりだ。しかもそれは確か2001年のフジロックじゃなかったかと思う。あの時は暑かったなあ。最前列にはいかにもさあ暴れますよという短パン、手ぬぐいの連中がズラリ。1曲目からモッシュの嵐で、異常な盛り上がり。しぶきが上がるほどの汗の熱気でむせ返るよう。正直僕はこういう盛り上がり方が苦手なので後ろの方で見ていた。BRAHMANにしても彼らがパンク/ハードコア直系のルーツを持っていることは十分にわかるけども、僕はモロそっち系統の曲よりももっと彼らの独特のメロディラインが前面に出た曲の方が好きだ。新作でも「」や「」など、トシロウのボーカリストとしての側面が強調される曲の方が体に入ってくる。この3年でいろいろな経験をしたであろう彼らはバンドとしてもかなり強靭になったと思われ、演奏も緩急つけて(基本的には急なのだけど)、勢いで突っ走るというよりは「観せる」ものになっていたと思う。「」「ARRIVAL TIME」と畳み掛ける終盤はテンションも一気に加速し、トシロウはステージ上をのた打ち回るようにガンガン転げまわる。毎夜毎夜全身全霊で全てをそこに置いていくような感覚はそのままに、音楽的に大きくなったBRAHMANの姿を如何なく見せていた。MCはなし。アンコール含めおよそ1時間強のライブを終え、トシロウは両手を合わせ「ありがとう」深々とお辞儀をして帰っていった。以前に増して求道者のようなイメージが強くなっているBRAHMANだが、彼らのライヴはまさにもがいてもがいて何かを掴もうとする修行のようである。