無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

真冬の熱帯夜。

麗蘭 麗蘭2004 [ロック馬鹿と知的ヒッピーを元気にするTOUR]
■2004/12/11@札幌ペニーレーン24
 13年ぶりのセカンドアルバムを発表した麗蘭、待望の全国ツアー。ライブに関しては毎年年末の京都磔磔での年越しライブなど定期的に行っていたわけだけども、新作を携えてのツアーとなるとそれこそ、という話だ。チャボもステージで言っていたけどもこうやって新曲を披露できるツアーってのはまた格別なんだと。もちろんそれは集まった観客にとっても同じことなわけだ。
 ステージ前の方には椅子が並べられており、後ろの方は立ち見という変則的なフロア構成になっていた。 ジャングルっぽいステージセットの中、メンバーが登場。ベースには盟友早川岳晴、そしてドラムには北澤篤という構成。その、新作の曲ができるのがうれしいという話から「だから今日はニューアルバムの曲を1曲目から順番に行くぜ!」というチャボのMCに続いて「天の川サーフ」まで本当に順番通りやった(笑)。そかし、その中には「SOSが鳴ってる」「悲惨な争い」のような、今の世界を憂い警鐘を鳴らすナンバーもあるし、「Words」や「Simple Love Song」のような切ないラブソングもあるし、「あこがれの〜」のようなブルース、R&Bへのリスペクト全開のナンバーもある。つくづく幅の広い、バラエティ豊かなアルバムだったのだと思う。チャボは本当に楽しそうに、ギターを弾き、歌い、そしてしゃべり、踊る。麗蘭でやるときはいつも楽しそうだが、この日は特にそう見えた。観客のノリもよく、後ろで立ち見をしている人の方がむしろステージに向ってよく声をかけていたりして、非常に密接な空間が会場にあった。麗蘭の音楽そのものがハートフルだということもあるが、観客も含めてその空間を作っていたと思う。
 この季節に札幌でライヴをやるのも何かの縁。ということで、季節柄のクリスマスソングコーナーに突入。ジングルベル、赤鼻のトナカイなどのメドレーから麗蘭およびチャボのソロのオリジナルまで、とても温かい気持ちになるプレゼントだった。そして盛り上がっているこの札幌の夜を象徴するような「真冬の熱帯夜」に。大好きな「今夜R&Bを・・・」が聞けてとても嬉しかったし、同じように本編ラストの2曲も新作に納められていたこともあって昨年ライジングサンで見たときよりも反応が良く、本当に「ロックンロールに包まれていい気分さ」という気分だった。しかしその陰で新作のテーマの一つでもあるし、やはりチャボが表現者として絶対に逃れられないであろう「一生活者としてのの危機感」というものも常にそこにあった。「時代は変わる」(ディランのカバー)ではブッシュ、天皇陛下プロ野球など多岐にわたるテーマに沿って2004年を振り返っていたが、やはりどうしても明るい話題が少ない。でもその中で麗蘭では決してオプティミスティックな意味ではなく、希望を見出していくという意識が見える。それがとても感動的だった。
 アンコールでもとにかくチャボは元気。蘭丸もサングラスの奥では笑顔だった。「ミュージック」でこの日最高のクライマックスを記録し、4人は何度もステージにお辞儀をして去って行った。全く鳴り止まない拍手の中、再びメンバーが登場。「雪でタクシーが遅れてるからもう1曲、メンバー紹介だけして帰ります」と蘭丸。にくいことするなあ。ぶっきらぼうに見えてこういう細かい気配りを各方面にできるのがこの人の魅力なんだと思う。ギターの音にもそれは出てると思う。蘭丸がいて本当に良かったねえ、とチャボには言ってあげたい。本人が一番わかっているんだろうけど。
 最後も割れんばかりの拍手の中、何度もステージに戻ってきて礼をし、手を振るチャボ。蘭丸に「ハイハイチャボさん、わかったわかった」って感じで背中を押されてようやく楽屋に戻っていった。気がついてみれば開始から3時間半が経っていた。寒い季節、心と体が心から温まる、そんなライブだった。

■SET LIST
1.麗蘭のテーマ
2.SOSが鳴ってる
3.CHABO Jumps again
4.Words
5.Simple Love Song
6.あこがれの Southern Man
7.悲惨な争い
8.今 I Love youを君に
9.天の川サーフ
10.X'mas メドレー
11.SOUL X'mas
12.Merry X'mas Baby
13.真冬の熱帯夜
14.今夜R&Bを・・・
15.時代は変わる
16.Get Back
17.R&R Tonight
<アンコール>
18.Woodstock
19.平和ブルース
20.Hello Good-bye
21.ミュージック
22.(夏の色調)