愛の伝道師、曽我部恵一。
- アーティスト: 曽我部恵一
- 出版社/メーカー: インディペンデントレーベル
- 発売日: 2004/10/08
- メディア: CD
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彼はROSE RECORDという自身のレーベルを立ち上げた。前作はユニヴァーサルだったけれども結局はメジャーではなくインディーでの活動を選んだ。それを僕は逃げとは思わない。むしろ前作ではっきりと打ち出した「愛とポップ」というテーマをより深く届けるための選択だったのだろうと思う。曽我部にしても向井秀徳にしても(くるりなんかもそうだろう)、自分の音楽が目指すべき方向とそのために必要なものを明確に認識しているアーティストが同じようなアプローチを取っていることは非常に興味深い。
本作はインディーで気ままに自分の音楽を作って出したというようなお気楽なものではない。ダブルオー・テレサをバックにしたサウンドはややレイドバックした感触もあるが、その輪郭は非常にクリアだしバンドを初めて組んだかのような瑞々しさがある。そしてほとんどの曲がラブソングなわけだけど、どれもがその根底に孤独を背負っているのがとてもいい。一人でいるからこそあなたを求めるのだし、あなたと過ごすからこそ自分と向き合うのである。そしてテレビでは残酷で気が滅入るようなニュースばかりだから愛を歌うのである。本作で歌われる「愛」は間違いなく今の世の中と密接にコミットしたからこそ歌われたものだし、曽我部自身はっきりとそれを意識しているだろうと思う。ソロになってからの曽我部恵一は常にそうである。デビューシングル「ギター」も、9.11をニュースで見て書いた曲だったのだし。サニーデイ時代はむしろその面では無意識というか無自覚だったといっていいだろう。これは曽我部恵一というミュージシャンにとっては間違いなく成長である。
しかし本当にいい曲ばかりだ。そして、ステレオから流れてくる曽我部の声がとても優しい。拝啓、曽我部恵一。あなたの声はとても優しいよ。