無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

GO!ハイロウズGO!

THE HIGH-LOWS 〜The★MUSTANG 04-05
■2005/04/10@Zepp Sapporo
 実を言うと、ハイロウズのライヴをワンマンで見るのはこれが初めてだった。フェスやイベントで何回も見ているから全くそんな気がしなかったのだけど、そうなのである。そしてこれも話を聞いてああそうなんだと思ったんだけど、ハイロウズZepp Sapporoでやるのは初めてらしい。確かに今まではファクトリーホールとかでやっていたような気がする。そのおかげでなかなかチケットが取れなかったんだけど。ヒロトもMCで「ここ(Zepp)はいいなあ。楽しいなあ。」というようなことを言っていた。そうか、初めてだったのか。というのが信じられないくらい、圧倒的にあの広い空間にロックンロールが溢れていた。
 新作『DO!! The★MUSTANG』から「ゴーン」「砂鉄」そして「暴力アラウンド・ザ・クロック」と3連発。いきなりのフルテンション。照明はいつものように非常に地味で、ステージ上もシンプルこの上ない。4人と、楽器だけ。彼らのライヴを見るのは2年前の石狩以来だと思うのだけど、あの時はキーボードの白井氏が脱退してすぐだったということもあり、なんというか、鬼気迫るほどの緊張感と迫力に気圧されたものだった。しかし、今回の彼らを見ていてもそうした一種の恐さのようなものはなく、ロックンロールの核を純粋培養して抽出した、非常にアッパーで楽しさのみが残るようなものだった。
 ハイロウズもすでにデビューして10年以上が経つわけで、ベテランバンドの場合古い曲をやるとなるとファンはあれも聞きたいこれも聞きたいとなり、万人を満足させるようなセットはなかなか組めなくなる。その場合、「ファンの思いはともかく自分たちのやりたい曲をやる」か、「割り切って誰もが聞きたいヒットパレードにする」かというのが大方の選択だと思うのだが、ハイロウズはどちらでもなかった。というか、彼らのやりたい曲はみんなも聞きたいのだし、みんなの聞きたい曲は彼らもやりたいのである。そういう、幸せな相互通信が成り立っているのだ。それはやはりハイロウズの鳴らすロックが、演奏者聞き手すべてに対して開放のベクトルを与えるようなものであるからだろう。特に後半、「不死身のエレキマン」「ミサイルマン」「俺軍」「相談天国」「真夜中レーザーガン」の流れなど、フェスでもワンマンでもこれまで幾度となく繰り返されてきた構成であろうが、そこにマンネリ感など微塵もないのである。清志郎のようにマンネリを芸にまで昇華していると言うのとも違う。ロックンロールの結晶みたいなステージである。
 「ズートロ」の世界を言葉通り実践しているハイロウズはすごい。でも僕は彼らに本能とはまた別の高度な知性をも感じている。それをおなか一杯いただいた夜だった。ごちそうさまでした。

■SET LIST
1.ゴーン
2.砂鉄
3.暴力アラウンド・ザ・クロック
4.ノロノロ
5.月光陽光
6.ロッキンチェアー
7.罪と罰
8.青春
9.64,928〜キャサディ・キャサディ
10.荒野はるかに
11.ズートロ
12.アネモネ男爵
13.不死身のエレキマン
14.ミサイルマン
15.俺軍、暁の出撃
16.相談天国
17.真夜中レーザーガン
<アンコール>
18.ゲロ
19.サンダーロード
20.ハスキー