無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

最後の晩餐。

PEALOUT LAST STAND 〜響音 最後の狂鳴〜
■2005/06/18@札幌ベッシーホール
 PEALOUT解散のニュースを聞いたとき、ショックで一瞬固まってしまったあと、仕方のないことなのだろう、とも思った。7月30日、フジロックレッドマーキーで彼らはその歴史を終える。その前の、このツアーがどういうものになるのか。想像はしていたつもりだったが、実際に目にした光景は僕の予想を遥かに越えるものだった。
 開演前、札幌にこれだけPEALOUTファンがいたのか?と見紛うほどの人。もともと狭いベッシーホールだが、飲み物を待つ行列の行き場がなくなってしまうほど、フロアは人でいっぱい。うしろの階段にも人が溢れるような状態だった。ステージにはいつものように「peal of youth」の旗。
 静かに始まったライヴは2曲目で一気に興奮の坩堝と化す。フロアは汗の匂いでいっぱいになり、ステージ上の彼らもバンド名の通り、その音楽を怒涛のように轟かせる。「April Passenger」のようなゆったりとしたテンポの名曲も彼らには多いが、こういう曲の時に、この日の(というか、このツアーの、と言うべきだろうが)彼らがどれだけの集中力と高いテンションでステージに乗っているのかと言うことがはっきりと判った。とにかく、鳴っている音の一つ一つに全く無駄なものがない。それだけじゃなく、ここになくてもいい音・なくてもいい楽器・いなくてもいいスタッフ・いなくてもいい客、そういうものが一切ない空間だった。全てがあるべきところにある、そんな夜だった。
 途中、札幌出身と言うベーシストがサポートで入り4人編成に。ハンドマイクで歌う近藤はステージから身を乗り出し客に身を預けたり、ドラムセットのところで叩くわ叫ぶわ、とにかく動き回っていた。手数とテンションで全てをなぎ倒そうとする高橋のドラム、そして歪みまくっているのにコード感を失わない岡崎のギター。ロックの本能だけで音を鳴らす、獰猛な野獣たちの狂鳴がそこにはあった。「The Shiver Cheers」のあと、聞こえてきたイントロはR.E.M.の「世界の終わる日」。個人的にこの曲はR.E.M.の中でも1・2を争うほど好きな曲で、しかもこんな夜に演奏されたのではたまらない。どうにもならない世界をひっくり返し、悪意のあるユーモアでシニカルに笑い飛ばすようなこの曲は、この日彼らが演奏した中で最も逆説的でひねくれたものだったかもしれない。しかし、僕にはマイケル・スタイプがこの曲を歌うときのように、ものすごく純粋で無垢なものに聞こえてきたのだった。
 3人編成に戻り、近藤がキーボードに陣取る。まだまだロックの宴は終わらない。「ROLLS」ではフロア一体になって"SHOUT COOL! DANCE FOOL! EVERYBODY RIGHT!"のコーラス。そして高橋のトチ狂ったようなどうぶつ奇想天外シャウトから「PLANET ANIMALS」へ。正直、もうこのあたりになると酸欠というか、体力的に一番きつい時間帯だったのだが否応なしに足が動く。拳が上がる。そして叫びたくなってくるのだった。やっぱり「透明の地球儀」で僕の涙腺は決壊した。もうさすがに勘弁して、ってところに「GOODBYEBLE」、そしてあのイントロが来た瞬間、「爆裂世界」でステージ前の群衆の中へと飛び込んでいった。
 2度目のアンコール、もう物足りない、ということではなく、みんなこの時間が終わってしまうことが名残惜しくて仕方がないという感じだった。アンコールのラスト、札幌でのPEALOUT最後の曲は「Beat For Your Right」。近藤はフロア脇の楽屋へ続く階段に昇り、フロアを煽る。汗と涙でびしょ濡れのまま拳を上げて応える観客。渾身の「peal of youth=若さの轟き」。音が鳴り終わった瞬間、やり切った、あるいは全てを見届けた、という感慨が残った。公式サイトでの彼ららしい、シンプルで真っ直ぐな言葉が象徴している。ごまかしたまま音楽をやりたくない。ロックにウソはつきたくない。それが彼らを解散という結論に向わせたのだと思う。彼らは最後までロックンロールの核心だけを見据え、そこに向って音を鳴らしていたバンドだった。ありがとう。ステージの上でも、フロアでも、最後にはあの空間にいた全員がその言葉を口にしていたのだった。

■SET LIST
1.AGAINST
2.The Way
3.New Chord
4.心臓が動き出すとき
5.STAND
6.Like a Seagull
7.Lost in Hell
8.April Passenger
9.Lucky Star
10.BE
11.ソウルライダー
12.QUEST
13.NO EXIT
14.The Shiver Cheers
15.It's the end of the world (as we know it)
16.C.M.C.
17.静かな奇跡
18.HEIDI
19.ROLLS
2 20.PLANET ANIMALS
21.LIFE
22.SATELLITE EMERGENCY
23.Universal Heartbeat
24.Pianoman R&R Shake Shake Shakes
25.透明の地球儀
26.FLY HIGH
27.GOODBYEBLE
28.爆裂世界〜世界に追い越されても〜
29.Sunday Rainbow

30.EVERYTHING
31.Peace, Energy and Love on Unchained Time
32.YOU

33.OVER HERE
34.Beat For Your Right