無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2005 in EZO〜(2)雨のち晴れ模様

■2005/08/19@石狩湾新港
 アーステントに移動し、The Band Has No Name。15年ぶりの復活アルバムもそんなにちゃんと聞いていたわけではないので体力を消耗しないように後ろの方で楽に見てた。民生は明日の自分のステージもあるからかそれともスパゴーの面々と一緒で気が楽だからか知らないけど、非常にリラックスしているように見えた。スパゴーの太くてアメリカンロック的な音が全体のムードを決めていて、そこに民生の違った意味でルーズなメロディーと声とギターが乗るという感じ。おじさんたちがなんとも楽しそうに演奏している。こんな気楽に何気にすごい音を聞けるというのはよく考えなくても贅沢な体験なのだろう。
 で、バンハズの途中からバケツをひっくり返したかのような大雨が降ってきた。テントなので曲間静かになると雨がバラバラと落ちる音がはっきり聞こえるのである。こりゃまずい、ということで連れがテントに一旦戻る。僕は次もそのままアーステントにいるつもりだったので慌てず気楽に構えてた。
 
 次はレミオロメン。単独ツアーに行かなかったのでアルバム『ether』以降のライヴを見るのはこれが初。大雨の中雨やどりがてらテントに来る人もいたと思うが、それでなくとも満杯に近いような状態だった。1曲目は「五月雨」。「びしょ濡れだけどサヨナラ」というサビがこの天気におあつらえ向き。この日のセットリストがどこまで事前に決められていたのかはわからないが、この後も驚くくらいにこの雨のフェスにぴったりの曲ばかりだった。「それは晴れた晴れた月明かりの日(春景色)」「晴れたら旅行でも行ってみましょう(ドッグイヤー)」などなど、天気の出てくる歌が結構あるのだな、と思った。「電話」でしっとりと盛り上げたところで、テントの屋根が微妙に明るくなっている気がした。雨が止んだ?のと同時に、奇跡のようなタイミングで「雨上がり」に突入。雨でなんとなくテンション下向き気味だったテント内の空気が一気にヒートアップ。鬱憤晴らしのように、「モラトリアム」「南風」と一気に突き抜けた。正直『ether』というアルバムには前作ほど入れ込めなかったのだけど、このフェスの場ではあまり関係なかった。昨年のポラリス岡村靖幸のように、その場の天気や空の色まで音楽の力で塗り替えてしまうようなアクトというのがフェスにはあったりするものだけれども、今年のレミオロメンはまさにそうだった。自然現象をあらかじめ用意された舞台装置にしてしまうような不思議な力がこの日の彼らのステージにはあったと思う。
 レミオロメンの途中で雨合羽を持って来てくれた連れと合流。牛串・焼き鳥・チャーハンをビールで一気に流し込む。ゲップでみんなにセイハロー。と、気持ちは既に電気グルーヴスチャダラパーに向いている。が、まだ時間がある。その前に再びアーステントでポリシックス。正直そんなにガツガツどうしても見たい、というわけでもなく、次のために前からアーステントにいようという意図もあったくらいだったのだけど、いや申し訳ない。良かった。ポリシックスのライヴは前作『NATIONAL P』時のツアーで札幌に来たとき以来だから約2年ぶりくらいだと思うのだけど、その間海外ツアーで揉まれた成果が出てたのかな。なんというかその場の空気とか客層とかにあまり関係なくストレートにがむしゃらに軽薄かつ真摯に自分達の音を鳴らすことで勝ってしまえるオーラみたいなものがあった。「BABY BIAS」とか「シーラカンス・イズ・アンドロイド」という新曲も、「NEW WAVE JACKET」や「URGE ON」などのちょいなつかしい曲も区別なく強力な武器だった。ハヤシはサングラスも吹っ飛ばして絶叫パフォーマンス。カヨちゃんは相変わらず無表情に機械仕掛けのような振り付けとコーラスをバンバン決める。個人的に、ポリのライヴはいつもカヨちゃんを見てる確率8割である。フェスから帰った後、昨年出たベスト盤を入手して聞いた。俄然新作も楽しみになった。このようにちょっと自分の中で冷めかけていたそのバンドへの熱がぶり返してしまうこともフェスの楽しみの一つではないだろうか。と思う。