無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2005 in EZO〜(6)そして夜が明ける。

■2005/08/20@石狩湾新港
 約3年半ぶりに活動開始した真心ブラザーズ。僕は2001年12月にその休止前ラストライヴとなった日本武道館に行っている。活動再会した彼らも見ておきたいと思うのは当然。復帰シングルは彼らのポップ・ソウルサイドが前面に出た桜井作の曲だったようだが、この日は4人編成のロックンロールバンドとして登場。ソウルフルな女声コーラスも、跳ね回るホーンセクションもなし。ギターとドラムとベースと声だけ。シンプルな熱気に溢れたステージだった。でも、曲が「S.B.T.」とか「素晴らしきこの世界」とか「STONE」とか、ちょうど『KING OF ROCK』の頃のモード。集まっていたオールドファンは当然、大盛り上がりだったのだけど、活動再開したのは昔の曲をやりたいからではないはずで、それこそ活動休止中さらに生身の愛とロックンロールを体現していたYO-KINGが真心としてその世界を広げていかなければいけないのじゃないかな。そういう新曲をきっとみんなも聞きたいはずだと思う。「スピード」を聞きながらホントにそう思った。でも、10年前の曲が今でも全然通用することはよくわかりましたけど。だからこそね。
 
 鳥串しをつまんでからサンステージに。忌野清志郎&NICE MIDDLE with NEW BLUE DAY HORNS。RCのデビューから35周年ということでリリースやトリビュートなどの企画ものもいろいろ忙しいようだ。新作『GOD』からの新曲とRCの必殺ナンバーと取り混ぜた構成。いつもの通りと言ってしまえばそれまでだが、それでも「ブン・ブン・ブン」や「トランジスタ・ラジオ」なんかを聞くと胸に来るものがあるのである。あの声があのメロディーをなぞるだけで。ただ、彼のオヤジ化が気になる部分もなくはなくて、「キヨシです…気がつけば35周年…同期はみんないなくなってしまったとです…」と、今人気のお笑い芸人のネタをパクったMCを聞くと、面白いんだけど、ちょっと悲しくなってしまう気持ちもあり。しかし「スローバラード」はやはり泣けるし、「リメンバー・ユー」ではヒロトがゲストでステージに出てきたし、そしてクライマックス「雨上がりの夜空に」から「キモちE」でたっぷり楽しませてもらった。往年のスリリングさはないけど、ここまでロックをひとつの芸として昇華した唯一の日本人である。尊敬に値します。
 そのままアジカン待ちで最前のモッシュエリアで休んでいると、みるみるうちに身動きが取れなくなった。すげーなこりゃ。個人的にはアジカンって、もっと野郎ファンの比率が高くてもいいバンドだと思うんだけど、こういうフェスの場においても圧倒的に黄色い声が主なのね。なんか、こんな一番前のエリアに僕のような30過ぎのオッサンがいると非常に場違いな感じ。あからさまに「テメー痴漢狙いか?」みたいな顔で睨まれたりしたぞ。金もらってもお前にはしねーよみたいな女に。どうしてくれるアジカン。別に彼らのせいではないのでそれはいいとして。ステージはオープニングのセッションからいきなり「君という花」。「Re:Re:」から「ループ&ループ」、「アンダースタンド」、新曲「ブラックアウト」、そして「リライト」、「未来の破片」、「サイレン」というセット。メジャーデビューからのシングルを全て網羅するこれでもか、という問答無用な選曲。当然真夜中にも関わらずその盛り上がりは頂点に近かった。しかしこれは単にファンサービスとか、何かやらしい狙いがあっての選曲ではなかった気がする。沸騰しつつある周囲の状況に惑わされること無く、音楽集団として進歩したい/できる/してる、という、彼らの意思を感じた。NANO-MUGEN FESの成功などを経て、これだけベタな選曲を許せるだけの自信をつけた部分もあるのだと思う。広いサンステージの中央にちんまりとまとまって4人だけで演奏する彼らの姿には真摯なストイックさを感じずにはいられなかった。
 あまりにも疲れたのでステージから離れ、ラーメンで腹ごしらえ。クレージーケンバンドは座って見てたんだけど、気がついたら寝ていました。「タイガー&ドラゴン」にも気がつかなかった。オレの話を聞けなくてすみません。くるり。クリストファーが脱退してからはまたいろんなドラマーとセッションやライヴを繰り返している彼ら。この日のサポートドラマーはスガシカオをはじめ引っ張りだこ、日本で最も忙しいセッションドラマーの1人である沼澤尚氏が務めていた。時間帯として最もテンションを維持するのが難しいのは確かなのだが、くるりにとっては昼間の明るい時間よりむしろこのくらいの方がいいように思う。新作に収められるであろう新曲でほぼ半分を埋めたセットだったので、正直大きく盛り上がるというわけではなかった。最も観客が沸いたのが「ばらの花」というのは仕方が無いところだろう。新曲はお祭り的なものからしっとりとしたポップソングまで非常に幅広く、新作を期待させるに十分なものではあった。でも、この日のライヴに限って言えばどこか手探りな感じが否めなかった。「この新曲、どや!」という確信が届いてなかった。少し残念。
 もうヘトヘトになってしまい、ムーンサーカスで連れを見つけて一緒に踊る気力も体力も無かったのでテントに戻って少し寝ることにした。東の空は曇っているがもう白んできている。アーステントの横のスクリーンでは、過去にライジングサンに出演したときのギターウルフの映像が流れていた。故・ビリーの姿に思わず涙腺が緩む。
 
 というところで、今年僕が石狩で見た全てのアクトの感想は終わり。最後に、今更という気もするが少しえらそうに総括的なことも書いてみよう。RSRFESも数ある日本のフェスの中でその存在意義をきちんと確立した感があり、フェスそのもののファン層がかなり増えた印象がある。昨年、今年とあまり天候に恵まれていないのだけど、参加者がその中でも自分達のやり方でちゃんと楽しんでいて、いいヴァイヴが会場に溢れていたのが自分でも嬉しかったし、頼もしくも感じた。その一方で、フェスというものがあまりに日常的になりすぎてきて、そもそもあまりロックのライヴなどに足を運ばないような人間も気軽にフェスに来るようになってきている感じもした。フジロックが日本で初めて提示し、徐々に広がってきたはずのフェスを楽しむための暗黙のルールがそこかしこで無視される瞬間を目にしてしまったのも事実。でもそれはまた時間をかけてわかってもらうしかないのだとも思う。今年で7回目のRSRFES。僕自身にとっても7回目。ここまで来たらWESSがやめるまで付き合おうと思う。来年もよろしくお願いします。最後に、過去2年間違い続けていた「RIST BAND CHECK」のスペルが今年は正しく「WRIST」に直されていました。こういう小さなことからこつこつとやっていきましょう。おしまい。
 はー、疲れた。最後まで読んでくださった方、どうもありがとう。