無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

赤い電車男はミュージックフリークス

くるり ワンマンライブツアー2005〜はぐれメタル純情派〜
■2005/11/18@Zepp Sapporo
 新作『(NIKKI(初回限定盤DVD付))』をAmazonで予約したのだけどまだ届かないので、仕方がないから先週見たライヴの感想でも書くことにする。昨年のツアーは、今まで見たくるりの中でも最も素直にロックバンドとしてのダイナミズムを感じることのできたライヴだった。個人的にはその要因はドラムのクリストファー・マグワイヤの加入によってもたらされたものだと思っていたので、彼が脱退してからのくるりがどう変化したのか/していないのかが非常に興味があったし、心配だった部分でもあった。
 このツアーでのドラマーは新作のレコーディングにも参加したクリフ・アーモンド。1曲目、RSRFESでも聞いた「お祭りわっしょい」でスタート。そこから、「Superstar」を始め、新作からの曲が序盤は続く。で、驚いたのがドラムの音が昨年体験したものと感覚的に変わっていないのだった。もちろん、クリストファーとクリフのプレイは全くと言っていいほど違う。クリフの方がクールな感じで、リズムの取り方は正確だ。しかし、そのインパクトの強度やサウンドの作り方には通じる部分があると思った。単純に「え?ドラム、同じじゃん!」と思ってしまったのだ。外人のドラマーって、基本こんなにすごいの?というか。もちろん、すごいのはドラムだけではなく、佐藤のベースも達身のギターも、すでに準メンバーと言ってもいい堀江氏のキーボードも素晴らしかった。そして何より岸田のギターがかなりはじけていた。激しい曲でもゆったりした曲でも、これでもかと前面に乗り出してくる。ここまで岸田の自己主張の強いプレイはあまり見たことがない。Singer Songerでギタリストに徹した影響だろうか。何にせよ、そういう部分も含めて、テンション漲った印象が強いステージだった。久々に生で聞いた「ARMY」のようにサイケな雰囲気の曲でも、冷静でありながらかなり高密度のエネルギーが充満していたと思う。このツアー中でもこの日が初披露だったという「ロックンロール・ワークショップ」から本編ラストの「ロックンロール」までは一気に駆け抜けるまさにロックンロール・サーカス。新作への自信がそのまま勢いとして表出したような、いいライヴだった。RSRFESの時とは別のバンドのようだった。
 アンコールは「赤い電車」から始まり、「窓」をはさんで「ワールズエンド」へ。堀江氏のクラヴィネットが印象的な、前回ツアーの時とほぼ変わらないファンキーアレンジヴァージョン。イントロから客席は大盛り上がりで、一気にZeppがダンスフロアへと変貌する。が、今回本当にすごいのはそれだけではなかった。曲が一段落した後、そのままアドリブ満載のインストルメント・パートがスタート。まるでストーン・ローゼスの"I am the Resurrection"の後半のようなテンションでどんどん曲の姿が生き物のように変化していく。JBの「セックスマシーン」からクール&ザ・ギャング「ジャングル・ブギー」、果てはMCハマーの「ユー・キャント・タッチ・ディス」(リック・ジェームスじゃないところがミソ?)、キング・クリムゾン「21世紀の精神異常者」など、次々とメドレー的に曲の断片を盛り込んでいく。即興でZAZEN BOYS的なラップを披露したりと、岸田の悪ノリも加速していく。再び「ワールズエンド」のリフレインに戻り、これで終わりかと思いつつ、「どこまでもいける〜」のワンフレーズで本当にどこまでも続けようとする。ほっといたら本当に1時間でも2時間でもやっていそうだ。スタジオでの彼らはこんなセッションをいつもやっているのだろうか。このツアーでも最長35分という記録があるそうだが、この札幌でも実に25分くらいやっていた。今回の目玉であるこのセッション、音楽集団くるりの面目躍如というべき、ユーモアとテクニックとエンターテインメントが渾然一体となった至福の時間だった。まだ未体験の方は、ぜひ。

■SET LIST
1.お祭りわっしょい
2.Superstar
3.Ring Ring Ring!
4.Birthday
5.花の水鉄砲
6.ばらの花
7.The Veranda
8.Baby I Love You
9.ARMY
10.Tonight Is The Night
11.(It's Only) R'n R Workshop!
12.Bus To Finsbury
13.ワンダーフォーゲル
14.水中モーター
15.虹
16.ロックンロール
<アンコール>
17.赤い電車
18.窓
19.ワールズエンドスーパーノヴァ