無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

ヤンヤン歌うスタジオ。

You Could Have It So Much Better

You Could Have It So Much Better

 2004年の新人の中でも1人勝ちというくらいの勢いだったフランツ。前作から1年半でのセカンドアルバムは、決して長いスパンではないだろう。日々熱狂していく周囲の喧騒と長く続くツアーと、新人バンドを疲弊させる要素が満タンだったであろう中でこのアルバムを作ったことは評価に値する。
 ポップなビートとヨーロッパっぽい翳りのあるメロディーは健在だが、どの曲もかなり展開がめまぐるしい。リードシングルの"Do You Want To"なんかは特に顕著で、複数の曲の断片を無理矢理ひとつの曲に落とし込んだという印象すらある。Aメロ、Bメロ、ブリッジ、サビという、基本的なポップスの楽曲構造がある中で、その各々が全く関係なく独立したクライマックスとして鳴らされている。かなり歪な音楽だと思うのだが、これを2005年で最も高性能のポップスとして機能させてしまうのが彼らのすごいところだと思う。この絶妙のバランス感覚が他のニューウェイヴリヴァイバルバンドと一線を画すところなんだろう。デビューして2年目とは言え彼らは80年代をリアルタイムで体験している世代なので、年の功というかそれもまた強みなのだろう。
 いろんな意味で前作をさらに押し広げようとしているアルバムだし、実際そういうアルバムになっていると思う。けど、ちょっと個人的には躁鬱が激しすぎるというか、落ち着きがないようにも感じられる。何回も聞いてると疲れてきてしまう。