無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

 新庄君の場合、昨年末から噂はあったので、いきなりという感じはしませんでした。シーズン始まった矢先の引退発言に賛否両論あるようだけど、海外のスポーツではわりとよくあることなので僕個人は別におかしいとは思いません。
 ベテランになったスター選手が毎年のように去就を注目されるのは恒例行事のようなもので、シーズン前から「今シーズン限りで引退」と宣言し、決意を込めてプレーする選手も多いです。日本のプロ野球では「シーズン中は全力でプレーすることが大事。引退とかはシーズン後に考えるのが当然。(でないとファンや相手チームに失礼)」という考えがいまだに主流ですが、別にやめると宣言したから後は手を抜いてプレーするというわけではないでしょう。相手チーム云々という話だって、それは本当に酔ったオヤジの御託レベルのイチャモンであって、実際に引退発表した選手を前にプレーが湿ったり言い訳するようならそもそもプロの資格はないし、フィールドに立つ以上お互いがピークでありベストコンディションであるという認識でプレーするのが当然と思うのです。むしろ、「彼に有終の美を飾らせるために優勝しよう」とチームが一丸となるとか、彼の最後のプレーを見ようと多くのファンが球場に足を運ぶとか、戦力的にも興行的にもプラスに転じる面があるのではないかと思います。(新庄の場合、後者の考えのほうが大きいと思いますが)とか言いつつ、「優勝したいからもう1年やる」とか、あとで撤回する例もあるわけですけどね。

 話は逸れますが日本のプロスポーツでは、引退→復帰という例もほとんどないですね。海外の場合だとまだ現役でやれる実力があるのに、優勝したりMVPになったりとほとんどの栄誉を手にしてしまったスタープレーヤーが割と早く引退してしまうことがあります。(最たる例はマイケル・ジョーダンでしょう。)こういう時の決まり文句は「家族と一緒にいる時間を大切にしたいから」です。そういう選手は、実力的にはまだやれるので、本人のモチベーションが戻れば現役復帰する可能性はあるわけです。そしてその復帰に対してもファンは「また彼のプレーが見れる!」と大喝采で迎えるのです。でも日本の場合、多くの選手はボロボロになってプレーに往年の輝きがなくなってからやめるのがほとんどなので、そもそも復帰すること自体が現実的ではないし、仮に実力的にまだやれる場合でも「一度やめると言ったのになんだこのウソつきめ!」と批判の対象になってしまうように思います。(ファンは違うと思いますが、一般的に)
 この辺はお国柄の違いと言うか、日本独特の「滅びの美学」とでも言うようなものが根底にある気がします。そして、新庄君の言動の多くは確かにエキセントリックではありますけれど、海外(特にアメリカ)の基準で考えれば普通に理解できることもあるのです。今回の引退宣言もその範疇ではないかと。彼の思考回路そのものが日本よりは海外に近いのでしょうね。そんな新庄君と対極である、サムライスピリッツの塊のような小笠原選手が同じチームにいることが非常に面白いし、お互いプロとして認め合っているというのがいいですね。そういう話は「僕のスポーツ見てて感動する回路」の琴線に触れまくりなのでしかも地元だからファイターズ大好きですよというお話でした。