無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

新しいスタート。

フルカワミキ 「Coffee & SingingGirl!!!」
■2006/06/25@渋谷AX
 スーパーカー解散後、iLLとして活動を開始したナカコーに続き、ミキちゃんが本名でソロデビューを果たした。今回は、シングル発表後、来月のアルバム発売を前にしての本当の意味でのお披露目ライヴ。ステージには白い風船が設置してあり、スクリーンとしても使用されていた。基本的にはシンプルなもの。定刻から10分ほど遅れて客電が落ちる。割とスタイリッシュな女性もちらほら見かけられた会場だが、ステージ前にはスーパーカーからのファンが多く詰めていたようだ。太めの歓声が上がる。バンドのメンバーは勝井祐二(Vio)、中村弘二(Gr.)、宇田隆志(Key,Gr.)、ナスノミツル(Ba.)、吉村由加(Dr.)という布陣。しっかりナカコーがサポートしているのがほほえましい。
 なんせ、まだシングル1枚しか出ていないので、アルバムの曲はほとんどがこの日初めて耳にするものばかり。シングルの「Coffee & SingingGirl!!!」はキラキラしたサウンドのファンシーな打ち込みポップだったが、同じようなスタイルの曲は少なかった。というか、彼女曰く「ライヴと音源はちょっと違うのでアルバムはまた違った感じで聞いてもらえると思う」ということらしい。確かに「Coffee〜」も吉村由加のパワフルなドラムが牽引するアレンジで、CDとは違う印象だった。シングルもそうだったし、恐らく曲は彼女自身が書いているのだと思うが、独特の浮遊感あるメロディーとスペーシーで広がりのあるシンセの音が一つの大きな軸になっている模様。それをベースとドラムの低音がかなりヘヴィーな音像で支えていた。勝井氏のバイオリンがこの日のライヴではかなりキーになる個性として響いていたが、音源ではどうなのだろう。印象に残ったのは4つ打ちのリズムとポップなメロディーが曲を牽引していく「I Love You」という曲と、サビのリフレインが耳に残るこれもポップな「7STARS」という曲。曲名は分からないが、本編のラストで演奏した、バンドが全力で音の壁を構築するような迫力ある曲もよかった。全体としては、きらびやかなガールポップ、というよりは、もっとトータルでのアート性を意識した楽曲であり、ステージ構成だったように思う。少なくとも、僕が想像していたよりスケールの大きな世界をこれから見せてくれそうだ。期待したい。
 ミキちゃん自身の声も、スーパーカー時代より芯がはっきりしていて、ソロアーティストとしての決意というか、凛としたものを感じた。ベースを持つ姿も懐かしい。ソロとして、フロントウーマンとして前に立つということにしっかりと向かい合い、決して逃げることのない潔いステージだったと思う。ただ、MCがなんともホンワカしていて初々しいことこの上なかった。かわいかった。
 アンコールは、シングルのカップリングだった「SUMMER」。そして「今日は知らない曲ばかりだったと思うので、最後にスーパーカーというバンドに敬意を表して」演奏したのが「Strobolights」。当然ではあるが、この日一番の大歓声。アレンジは大きく変わっていたが、彼女の声はさらに伸びやかに、もっと大きな未来の光に向っているようだった。

Coffee&SingingGirl!!!(初回生産限定盤)(DVD付)

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