無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

つなぐもの。

ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour2006 「count 4 my 8 beat」
■2006/07/02@Zepp Sapporo
 ここ数年の話だけど、ライヴに行ったときに「なんか、以前と客層が違うよな」と感じることがたまにある。どのバンドの、ということではなく、以前ならスタンディングのライヴなどで見かけなかったような若い子(特に女の子)が多くなったような気がする。親しみやすいキャラのバンドが増えていたり、フェスの認知度が上がったりしたことで以前よりもライヴに行くという行為の敷居が低くなっているのかもしれない。この日のアジカンのライヴ会場でもそういう感覚が強かった。明らかに、普段ロックのライヴなんか行ってないだろ、という人が多い。それはライヴ中のノリについてもそうで、アイドルのコンサートのように、会場中が一斉にサビで同じ手の動きをしたりすることがあるのだ。(多いのが、親指と人差し指でピストルみたいな形をして、肘から先を前後に振るやつ)あれ、どうも僕は不自然だと思うのだけど、そういう盛り上がりを許容するのが今の日本のロックシーンなのだろう。そういうことになっている気がする。(フェスとか行ってそうな人もそういう動きしたりするよね。なんで?)
 そういう客層が増えることはいいことでもあるが、反面、そのバンドにしか興味が無いという客もいるということだ。アジカンは聞くけど、他のロックバンドはよく知らない、みたいな。それはそれで楽しみ方は人それぞれなのでいいのだけど、少なくともアジカンというバンドはそういうバンドではない。どうしてもロックでなければならなくて、ロックに魅せられて、ロックを選んだ人たちだ(普通のロックバンドは皆そうだろうが)。同じように、自分たちが魅了されたロックを自分たちのファンにも提示したい、きっかけは自分たちでいいから、その先にあるもっと大きなものに気づいて、手を差し伸べてほしい。そう思っているバンドだ。NANO-MUGEN FESなどはその意思が最も顕著に現れるイベントだろう。
 しかしやはりアジカンがあればそれでいいというファンも少なくないはずで、そういう微妙なズレというのがどうしてもライヴの中には見えてきてしまうのだ。この日の彼らの演奏は素晴らしいものだった。以前見たときよりもバンドのアンサンブルは確実に向上しているし、セットの緩急のつけ方も上手かった。「センスレス」「サイレン」「月光」という本編ラストで、ヒリヒリとした緊張感に満ちたクライマックスが訪れたのが最も印象的だった。こういう芸当ができるバンドになったのだなあ、と。カジュアルにロックを楽しむことを否定する気は毛頭ないが、明らかにそれとは違うことがステージ上で行われているのに、周りが無批判に盛り上がっているのを見るとちょっと萎えてしまうのだ。
 でも、アジカンはそこから逃げない。であれば、もっと自分たちの音楽を精度よく、深いものにしていけばいい、という気概を見せたのが他ならぬ『ファンクラブ』というアルバムだったと思うから。紛れも無い本物の、大文字の「ロック」へ。アジカンの挑戦は続く。

■SET LIST
1.暗号のワルツ
2.ワールドアパート
3.ブラックアウト
4.ロードムービー
5.桜草
6.路地裏のうさぎ
7.ブルートレイン
8.真冬のダンス
9.バタフライ
10.Re:Re:
11.リライト
12.センスレス
13.サイレン#
14.月光
<アンコール>
15.12進法の夕景
16.ループ&ループ
17.嘘とワンダーランド
18.羅針盤
19.君という花
20.タイトロープ