無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2006 in EZO(2)〜林檎降臨

■2006/08/18@石狩湾新港
 くるり終了後、そのまま嫁とムーンサーカスへ移動。グリーンオアシス側のエリアが広くなった以外は、会場のレイアウト含めて殆ど昨年と変わっていない。橋を渡ってアーステント等があるエリアに行くのだけど、この橋の所にいるリストバンドチェックのスタッフがいつも異様にテンションが高くておもろい。
 ムーンサーカスにてInk。電グル狂の嫁は当然だが、僕も今回楽しみにしていたアクトのひとつ。ちょうど瀧見憲司のDJが終るところだった。入れ替わりで卓球と川辺ヒロシが登場。こういう、DJとかダンス系のライヴはセットチェンジが無いので待つ時間が短くていい。おもむろに卓球が話し出す。「えーー、ひとつ残念なお知らせがあります。今日ここでライヴをやる事になってましたが、データが届きませんで、できなくなりました。」えーー!と悲鳴をあげる観客。「というウソを今つきました。」(笑)卓球らしいタチの悪い冗談でライヴは幕を開ける。
 基本的なトラックは川辺ヒロシが次々とプレイし、卓球はそこに上モノをかぶせたり、エフェクトをかけたり、と役割分担がキッチリとなされているという印象。川辺ヒロシはほとんど観客の方を向いたり、話す事もなく、淡々とビートを繰り出している。アルバムでも印象的な「Into the sound」からスタートしたのだけど、卓球はほぼずっとマイクを持ち、歌うなり、観客を盛り上げるなりしている。派手なパフォーマンスというわけではないが、常に観客とのコミュニケーション役をこのInkでは卓球が担っているのだ。電気グルーヴの時とも、ソロのDJの時とも違うその役割を非常に無邪気に楽しんでいるように見えた。まさか「氷の世界」(!)までやるとは思わなかった。このように、卓球がリラックスして音と戯れることができるというだけで、Inkというユニットは意味のあるものだったのじゃないかと思う。雨がまだぱらついていたが、ほとんど気になることはなく、ラストの「Good That You Come」まで幸福感に包まれる時間だった。1時間あっという間だった。
 
 そう、今年のライジングサンは各アクトの出演時間が約1時間と、これまでよりも長く設定されている。なので、アーティスト数は減ったが、その分じっくりと見れるというわけだ。これまでなら6〜7曲だったのが10曲くらい演奏することになるので、かなり大きな違いだ。
 ここで、嫁は体調がイマイチだったので大事を取ってテントに。僕はSUN STAGEに戻ってZAZEN BOYS。そこそこスタンディングエリアは余裕があり、ガツガツしなくてもいい位置を確保できた。思えばZAZEN BOYSの初ライヴを見たのが3年前のライジングサンだった。あの時はRED STAR FIELDだったけど、今は一番でかいステージかあ。などと感慨にふける。あー、そうだ。一個言わなくてはいけないことがあった。セットチェンジの間、SUN STAGE横のスクリーンに注意書きとか次のアーティストとかが映し出されるのですけど、「NEXT ARTIST」が「NEXT AIRTIST」になってたんだよね。エアティストってなんだよと。近くにいた、(失礼ながら)ちょっとバカっぽそうな女の子2人組ですら「アレなんかおかしくないー?」と気づいてたぞ。気づけよ、WESS!ていうか、去年まで間違ってなかったのが何で今年になって間違うんだよ。チェック機能甘すぎ!「RIST BAND」が直ったと思ったらこれだ。WESSは英語に弱いのか。だから海外アーティスト呼べないのかな。などと余計な事まで詮索してしまう。来年は直してください。外国人の客もいるんだから、恥ずかしいっすよ。
 で、ZAZEN BOYS。昨年末札幌で見たツアーの時はまだ「III」が発売前だったので、バンドも客も手探り状態という感じだったのだが、それからどのように新曲が変化して行ったのか、がポイントだった。が、演奏の印象としては大きな変化はない感じだった。キッチリ練習で作りこまれた部分と、ある程度フリーに各人が演奏できる部分とが混在しているのが新作の曲群だと思うのだが、そのフリーな部分で松下敦のドラムがかなりイッてしまったプレイをしているのが印象に残ったが、バンドとしてはそれ以上のテンションを出していなかったように思う。もちろん、それでも凡百のバンド以上のテンションとユニークな音楽を持っているわけで、不満に思うのは贅沢というものなのかもしれないが…。
 一番の盛り上がりは既にアナウンスされていた、スペシャルゲストボーカリストが紹介されたときだった。黒のドレスに身を包んだ椎名林檎が登場した瞬間、一気に後ろから客が前に押し寄せ、怒号のような歓声が巻き起こる。「CRAZY DAYS CRAZY FEELING」「KIMOCHI」を演奏したのだが、特に「KIMOCHI」での向井と林檎の掛け合いボーカルは良かった。エロティックな半透明関係がそこにはあった。このサプライズがこの日のステージをスペシャルなものにしたのは事実。だが、それがなかったら?「III」での意欲的実験を進め、何かを形にしなくては、ファンは納得しないだろう。向井秀徳に対する期待というのはそれだけ大きいものなのだ。

■SET LIST(ZAZEN BOYS
1.SUGAR MAN
2.HIMITSU GIRL'S TOP SECRET
3.RIFF MAN
4.SEKARASHIKA
5.COLD BEAT
6.FRIDAY NIGHT
7.CRAZY DAYS CRAZY FEELING(※)
8.KIMOCHI(※)
9.半透明少女関係
※with 椎名林檎