無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

進化は止まらない。

breakdawn

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 前作『NIP SONG』からは3年ぶり。その間、2004年に『diversive audio EP』を、この春に先行シングル「glaySOUND zone」をリリースしている。2005年にはFIRE BALLと「FBDB」名義でシングルをリリースしている。彼らにしては、コンスタントに音源発表があったという気がする。まあ、普通の感覚とはやはりちょっと時間軸が違っているのですが。
 『diversive〜』に収録されていた「IN ORDER TO FIND THE NEW SENCE」が新録で収められている。『diversive〜』はクラブミュージック系のサウンドを取り込んだ実験的な内容のものだった。今回、ドラムの有松氏が脱退したことも受けて、そうした方向に行くこともあるのかと思ったが、全体としてはドラムにはゲストを招き、あくまでバンドサウンドを中心に様々な要素を詰め込むという、彼ららしいやり方でまとめられている。基本的には田中仁のギターが音色からフレーズから百面相のように姿を変え、そのサウンドの変化を牽引していくのだが、そのミックス具合がこれまで以上に絶妙で、洗練されてきている感じがする。
 歌詞には日本語が多くなってきているのだけど、「時代の先端の音に行く」「無形の造形でブッ壊したい」「すべて内部に取り込んでみせる」「俺らは全ての人々がぶっ飛ぶサウンドを創りたい」など、彼ら自身が音楽でどういうものを目指しているのか、何をやろうとしているのか、ということをかなり直接的に書いたものが多い。基本的にはこういうパートは小島が歌い、英語のパートは白川が担当している。小島のボーカリゼーションはよりヒップホップ的になり、白川はよりメロディーに重きを置くようになってきているようだ。かつては、どちらのボーカルが歌っているのか判別しにくいこともあったが、今作ではほとんどない。その対比が、刻々と移り変わるサウンドの中で際立つようになってきていて、興味深い。
 はっきり言って、かなり好きな音なので繰り返しよく聞いているのだけど、全体にドラムの音がやや軽すぎるかなという気がするのが残念。そして、前述のように歌詞が結局一つのことしか歌っていない感じなので、言葉にはサウンド以上に聞き手が没入できる箇所がない。そういう物を排除するところからスタートしているようなバンドなので仕方ないのかもしれないが、ここまで来たら思い切ってもっと叙情的な歌詞にトライしてみても面白いんじゃないだろうか。このサウンドに、きちんとしたストーリーを乗せてみるというのはそれなりにやりがいのあることじゃないかと思うし、聞いてみたいと思う。