無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

フルカワミキという生き方。

Mirrors(初回生産限定盤)

Mirrors(初回生産限定盤)

 ほとんど全ての曲の作詞作曲アレンジを自身で行った、フルカワミキのソロデビューアルバム。ここまでソングライティングに彼女が関わると思ってなかったので正直驚いた。シングル「Coffee & SingingGirl!!!」は打ち込みの非常にキュートなポップだったので、その方向で行くのかと思ったが、全体としてはむしろどこか陰のある、けだるいメロディーとアレンジが目立つものになっている。スコーンと晴れているのではなく、明るいんだけど曇ってる日のような。アレンジは彼女自身のクレジットになっているが、基本的には後期スーパーカーのイメージからそれほど外れたという感じではない。「I LOVEE U」のイントロなど、一瞬「BGM」か?と思ってしまった。実際、ナカコーや益子樹が全面的に参加しているので共通点が出るのは仕方ないかもしれないが、彼女の音楽志向が後期スーパーカーにはかなり反映されていたという見方もできる。
 全体に、一人前のミュージシャン、アーティストとして独り立ちしたい、できる、それを証明する、という意志が漲っているアルバムだと思う。6月の初ライヴでも思ったが、声、歌唱自体がスーパーカーの時から全く違っている。サウンドの一部として機能させようとしていたあの時とは違い、今の彼女の歌は自分の言葉を伝えるための楽器として、1本芯の通った強さを感じさせる。メロディーがやや単調なのはある意味仕方が無いのかもしれないけど、フルカワミキという人の意思によって全編貫かれているという部分で、まぎれもなく彼女のソロアルバムであるし、統一感を感じさせるアルバムだと思う。
 もともとファッション方面でも活動があった人だし、凛とした1人の女性の生き方を提示するという意味で、音楽のみならずトータルなアーティストになっていくのかもしれない。そんな可能性も感じる。