完璧な環。
- アーティスト: YUKI
- 出版社/メーカー: ERJ
- 発売日: 2006/09/06
- メディア: CD
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シングル以外は、YUKI自身が作曲にも関わった曲が多く、アレンジも割と複雑なものも多い。しかし、どの曲もポジティブなヴァイヴに満ちていて、キラキラと輝いている。彼女自身の詞と声が様々な曲を力技でひとつにまとめている。ビデオなどを見てても、年とともにどんどんキュートにコケティッシュに、そしてエロくなっていってる気がする。表現者としても、そしてアウトプットされる音楽も、非常にいいバランスだと思う。恐らく、ジュディマリ時代を知らないという彼女のファンも今は多くなっているのじゃないだろうか。
なぜこんなにポジティブな歌が歌えるのだろうか。知っての通り、彼女はこのアルバムが発表される直前、8月に第二子を出産した。それがこのムードを作ったというのは簡単だが、その前に、彼女は悲しい別れを経験している。病気で突然我が子を失ってしまうという悲しみがどれほどのものか、僕には想像もつかないが、深い絶望の淵に彼女は落とされたはずだ。その悲しみを乗り越えたからこそ、彼女の歌う愛と希望には説得力が宿る。陰を知らない人間が光を歌えるわけがないのである。ゆったりとしたアレンジが印象的な「バースデイ」では「生命の環」「8月のバースデイ」と歌われている。言うまでも無く、彼女が宿していた新たな命がテーマとなっている。そして、このアルバムのラストが「歓びの種」であるということに全て繋がっている。世の中に前向きな歌が多いからダメダメな自分を歌ってみたかった、と彼女が語る「ふがいないや」が、世の中に溢れる前向きソングよりも力強く聞き手の背中を押すという事実。彼女自身の人生に起きた悲しい事実をも、結果、アーティストとしてのパワーに変えてしまう今のYUKIは無敵状態だ。個人的には今年の邦楽アルバム五本の指に間違いなく入る傑作。
産休から復帰した彼女が、再び「母親」として、どれほど温かく、愛と希望に満ちた世界を歌うのか。今から楽しみで仕方がない。