無事なる男

敗北と死に至る道を淡々と書いています。

サル目ヒト科ロックンロール属。

ザ・クロマニヨンズ (初回限定盤)(DVD付)

ザ・クロマニヨンズ (初回限定盤)(DVD付)

 とことんまで削ぎ落とした言葉とメロディー。ざっくりささくれ立った荒っぽいサウンド。ヒロトマーシーの新バンドは、夏のフェス参戦時のステージそのままに、ロックンロールの初期衝動のみを純粋抽出したような音になった。「かっこいいぞ エレキギター」なんて、中学生が初めてバンド組んだんじゃないんだからというような歌詞だ。全14曲。言うまでもなく、ヒロトマーシー7曲ずつ。
 ブルーハーツからハイロウズになったときもそうだが、ヒロトマーシーのすごいところは、それまで築き上げた栄光(成功)を惜しげもなくリセットしてしまえるところだ。年を取っていくにつれて、普通は逆に捨てられないものが増えていき、自由に身動きが取れなくなってしまうものなのだが、彼らはそれを臆せず実行できる。それがすごい。ブルーハーツの時は明らかにバンドとしての活動が行き詰っている状況だったが、ハイロウズが活動休止しなくてはならなかった理由というのは外からは正直よくわからなかった。本能や直感というのは簡単だが、彼らの中では確実にそうしなくてはならなかった理由があるのだろう。そしてその答えは、このザ・クロマニヨンズのデビュー作の中にあるのだと思う。
 余計な枝葉を取り払って、本質だけを取り出したロックンロール。思えば、ハイロウズの10年間、(特にヒロトの曲は)どんどんシンプルな構造になり、意味不明な単語の羅列が多くなっていった。このアルバムに収められた曲は基本的にその延長線上にあるものだと思う。どんどん幼児退行し、退化して行っている。結果とうとう原人まで来た、ということか。「あさくらさんしょ」の中にはこんな一節がある。「わかったんじゃない 思い出したんだ」だからこそのリセットだったのかもしれない。
 クロマニヨンズとして、このスタイルとテンションでどこまで行けるのかはわからない。さすがにこのままだとサウンド的にも楽曲としてもバリエーションが足りないような気もするし、試行錯誤することがあるのかもしれない。しかし、そうして余計な荷物が多くなった時にはまたヒロトマーシーは全てをリセットして原点以下に立ち戻るのだろう。彼らのロックンロールは後ろに戻ることで進化していくのだ。